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2026年3月27日に閣議決定された新しい「住生活基本計画」により、国の住宅政策は「新築を増やす」から「既存住宅を活かす」へと大きく転換しました。今後10年で、旧耐震・省エネ性能・ハザードリスク・管理状況によって住宅の資産価値の差がこれまで以上に開いていくと見られています。
この記事でわかること
「住生活基本計画」と聞くと役所の資料のように感じるかもしれませんが、これは今後10年間の住宅政策の方向性を示す国の公式文書です。5年ぶりの改定であり、しかも2050年までを見据えた新しい形式の計画になっているため、これから住宅を買う人・すでに持っている人の双方にとって見過ごせない内容になっています。不動産取引の現場でも、この計画の内容を踏まえて物件の将来性を説明する動きが少しずつ広がり始めています。この記事では、計画のポイントを整理したうえで、資産価値の観点から「今の物件・検討中の物件はどちら側に入るのか」を確認できるようにまとめます。

住生活基本計画とは、国土交通省が住生活基本法に基づいて策定する住宅政策の基本方針で、今回の計画では2026年度から2035年度までの10年間が対象期間です。最大のポイントは「新築重視」から「既存住宅流通」への政策転換にあります。
今回の計画は2024年10月から始まった住宅宅地分科会の議論を経て、2026年3月27日に閣議決定されました。計画期間は10年間ですが、2050年に目指す住生活の姿を見据えた、これまでにない新しい形の基本計画とされています。背景にあるのは、単身世帯の増加、相続によって空き家となる住宅の増加、そして生産年齢人口の減少という社会構造の変化です。
計画は「ニーズに応じた住宅を適時適切に確保できる循環型市場の形成」「インフラ・居住環境の整った既存の住宅・住宅地の本格的な活用」「分野横断的な居住支援の充実」「既存住宅を最大限に活用する持続的な住宅市場を支えるあらゆる主体の連携・協働」という4つの方針を軸にしています。過去の計画が主に「新築住宅の量と質の確保」に重点を置いていたのに対し、今回は既存ストックの活用に踏み込んだ点が大きな違いです。
さらに計画は「住まうヒト」「住まうモノ」「住まいを支えるプレイヤー」という3つの視点から、具体的な目標を掲げています。住まうヒトの視点では、高齢期に備えた住み替え支援や住宅ローン商品の拡充が挙げられ、人生100年時代に対応した柔軟な住み替えの選択肢が増えていく見込みです。住まうモノの視点では、住宅性能表示制度を強化し、既存住宅の資産価値が適切に評価されやすい環境を整えることが掲げられています。住まいを支えるプレイヤーの視点では、住宅金融支援機構による既存住宅向けローンの充実や、消費者向けの住生活リテラシー向上策が盛り込まれており、既存住宅の適正な取引を後押しする狙いがあります。
これまでの住宅政策は、新築住宅の性能向上を中心に進められてきました。しかし今回の計画では、既存住宅・既存住宅地を市場を通じて本格的に活用する方向へと重心が移っています。国としては、きちんとしたスペックを備え、立地が良く、将来売却しやすい「流動性のある家」を重点的に支援していく一方で、条件を満たさない住宅への支援は相対的に手薄になっていく可能性があるということです。不動産取引の現場では、この政策転換を「住宅を数で語る時代から質で語る時代への移行」と捉える見方が広がっています。
計画の内容を実務的に読み解くと、特に重要なキーワードは「省エネ性能」「防災・ハザードリスク」「中古市場の活性化」の3つに集約されます。省エネ性能については2030年をめどにZEH水準が事実上の標準になる方向性が示され、防災については、ハザードマップで災害リスクが高いとされるエリアの評価・融資条件がより厳しくなる方向にあります。そして中古市場の活性化については、リフォームによって性能を向上させた既存住宅の価値を、売買価格にきちんと反映させるモデル事業なども予算化されています。この3つのキーワードは、次章で解説する「資産価値が下がりやすい家・上がりやすい家」の判断軸そのものにもつながっています。

住生活基本計画の内容を踏まえると、旧耐震基準・省エネ性能不足・ハザードリスク・管理不全という4つの条件に当てはまる住宅は、今後10年で資産価値が下がりやすくなると考えられます。順番に見ていきましょう。
1981年5月以前の建築確認で建てられた、いわゆる「旧耐震基準」の住宅・マンションは、耐震補強の有無が評価の分かれ目になっていきます。全国のマンションストック約704万戸のうち、旧耐震基準のマンションは約104万〜106万戸にのぼるとされ、全体の1割以上を占めています。国としても耐震性が不十分な物件まで手厚く支援することは難しいという立場が明確になりつつあり、住宅ローン控除の対象外となるケースも少なくありません。対震強化するか、しないままリスクを抱え続けるかで、今後の資産価値には大きな差がつくと見られます。旧耐震マンションが抱えるリスクの詳細は旧耐震マンションの3大リスクと今すぐできる耐震チェックで解説しています。
2025年4月には新築住宅の省エネ基準適合が義務化されましたが、これはあくまで通過点です。2030年からはZEH(ゼッチ)水準の省エネ性能が事実上の最低ラインになっていく方向が示されています。今は基準未達の新築でも問題なく売れていても、将来売却する際には「時代遅れの家」として評価されるリスクがあります。断熱性能が低い住宅は冷暖房費もかさみやすく、購入検討者から敬遠されやすいという実務上の傾向もあります。省エネ基準義務化の詳細は省エネ義務化で「ZEHでない家」は損?2026年の新常識で解説しています。
ハザードマップ上で浸水想定区域や土砂災害警戒区域に強くかかる物件は、金融機関からの担保評価が下がりやすく、良い条件でローンを組みにくくなる傾向が強まっていくと見られます。国としても、防災対策に継続的なコストがかかる住宅地よりも、リスクの低いエリアへの居住を促す方向性がにじんでいます。実務上、火災保険・水災補償の保険料にもハザードリスクが反映されやすくなっており、購入前・売却前のどちらのタイミングでも一度は確認しておきたいポイントです。ハザードマップの基本的な読み方はハザードマップの読み方全般と災害リスクの見極め方を参考にしてください。
修繕積立金が不足していたり、管理組合の運営が形骸化していたりするマンションも、資産価値が下がりやすい住宅の代表例です。特に「管理計画認定制度」の認定を受けていない自主管理マンションは、修繕サイクルが崩れやすく、将来の資産価値が保てないリスクが高まります。2022年に始まったこの制度による認定件数は2026年7月末時点で全国4,366件にとどまっており、マンションストック全体(約704万戸)から見るとごく一部です。認定の有無は今後、購入検討者が管理状況を見極める簡便な目安として使われる場面が増えていくと見られます。管理計画認定制度と固定資産税減額の関係はマンション減税は来年3月まで|管理で差がつくで詳しく解説しています。

反対に、利便性・立地・性能証明・可変性の4条件を満たす住宅は、今後の政策の追い風を受けて資産価値が維持・向上しやすくなる見込みです。
単身世帯・共働き世帯の増加を背景に、駅からの近さといった従来の利便性に加えて「遅くまで営業しているスーパーやドラッグストア」「保育園や教育施設が近くにあること」といった生活の質に直結する要素の重要性が増しています。実務上、多くのケースで見られるのは、こうした複数の利便性を兼ね備えたエリアほど、将来の需要が底堅いという傾向です。あわせてバス便を含めた複数路線が使える交通利便性も、資産価値の下支え要因として評価されやすくなっています。
マンションの資産性という観点では、最寄り駅から徒歩1桁分(特に7〜10分程度は検索されやすい条件とされる)であることや、総戸数の規模が大きいマンションほど流動性が高く売却しやすい傾向があることも、実務上よく指摘されるポイントです。専有面積については、単身・DINKS世帯にも子育て後の夫婦にも対応しやすい40〜50㎡台や、希少性の高い110㎡以上の物件が相対的に評価されやすいというデータもあります。こうした条件は住生活基本計画が直接定めたものではありませんが、既存住宅の流動性を左右する実務的な目安として押さえておくとよいでしょう。
国は人口減少を見据え、都市機能を拠点に集約する「コンパクトプラスネットワーク」という考え方を推進しています。この拠点の内側に位置する住宅地は行政投資が今後も継続しやすく、拠点の外側は将来的に生活インフラの維持コストが行き届きにくくなる可能性があります。郊外だけでなく都市部の周辺エリアでも人口が減少する区・市があるため、都心か郊外かにかかわらず、この拠点構造の内側にあるかどうかを確認することが大切です。再開発が進むエリアや、行政機関の移転・新駅開業といった動きがあるエリアも、拠点機能の強化につながりやすく注目に値します。
長期優良住宅の認定や住宅性能評価書など、性能を客観的なデータとして証明できる住宅は、住宅ローンの審査や将来売却する際のプラス材料になりやすいとされています。「新築だから安心」という思い込みだけで判断するのではなく、性能証明の有無を確認することが今後さらに重要になっていきます。特に中古住宅を検討する場合は、リフォーム履歴とあわせて性能評価書の有無を確認すると、価格だけでは見えない資産価値の裏付けを得やすくなります。
子育て世代から高齢期まで、住む人のライフステージは長い年月の中で変化していきます。壁の位置を変更しやすい、部屋数を柔軟に調整できるといった可変性のある間取りは、将来売却する際にもターゲット層を絞りすぎずに提案しやすく、資産価値を保ちやすい要素として評価される傾向にあります。子育てが終わった後に部屋数を減らせる、高齢期に生活動線をコンパクトにまとめられるといった柔軟性も、住宅性能表示制度の強化とあわせて評価されやすくなっていく見込みです。

既存住宅流通シフトの背景には、深刻な空き家問題があります。総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家率は13.8%と過去最高を記録しています。
同調査によると、2023年10月時点の全国の総住宅数は6,504万7,000戸で、このうち空き家は900万2,000戸にのぼります(賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家は385万6,000戸で、総住宅数の5.9%)。空き家数は1993年からの30年間で約2倍に増加しました(データ取得日:2026-09-07、出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」)。さらに、日本の既存住宅流通シェアは全体の14.5%にとどまっており、アメリカの81.0%、イギリスの85.9%と比べて大きな差があります。今回の計画が既存住宅の流通促進を強く打ち出した背景には、この構造的なギャップがあります。空き家を安く手放しやすくする制度の詳細は800万円の空き家、仲介料33万円で売りやすく、低未利用地の実態は土地白書2026|使わない土地の4割が管理不全にで解説しています。
2026年度税制改正では、個人が売主となる中古住宅であっても、一定の省エネ性能を満たせば住宅ローン控除の適用期間が13年に延びました(従来は買取再販住宅のみが対象)。あわせて床面積要件も緩和され、既存住宅も新築と同じ「40㎡以上」で申請できるようになっています。制度の詳しい借入限度額・控除額の早見表は住宅ローン控除の詳細解説記事、床面積要件の緩和については中古40㎡も住宅ローン控除へ|コンパクト購入に追い風を参照してください。既存住宅の税制優遇が拡充されたことは、今回の計画が掲げる「循環型市場の形成」を後押しする具体策のひとつといえます。
国土交通省は2026年度予算の概算要求で、リフォームによって性能が向上した住宅の価値を売買価格に適切に反映させる「住宅ストック循環促進事業」などにも経費を計上しています。中古住宅を売る側にとっては、リフォームによる性能向上が査定額に反映されやすくなる環境が整いつつあるという意味を持ちます。地震や水害などの自然災害への対策、既存住宅の流通促進、空き家対策は、いずれも今回の予算要求で重点施策の上位に位置づけられています。
当サイトが独自に取得したGoogle Trendsの検索需要データ(相対スケール0〜100、絶対的な検索数ではない)によると、「中古住宅」の検索関心は直近4週平均で82.0、「空き家」は81.8となっており、いずれも2026年6〜8月にかけて高い水準で推移しています(取得日:2026-09-07)。季節的なピークからはやや落ち着いているものの、住生活基本計画の閣議決定と時期が重なる中で、既存住宅・空き家への関心が底堅く続いていることがうかがえます。
日本の既存住宅流通シェアが低い水準にとどまっている背景には、新築を評価し築年数が古い住宅の価値を低く見積もる従来の慣行があります。主要国と比較すると、その差は際立っています。
国・地域 | 既存住宅流通シェア |
|---|---|
日本 | 14.5% |
アメリカ | 81.0% |
イギリス | 85.9% |
フランス | 69.8% |
出典:中古住宅流通シェアの国際比較(o-uccino)(データ取得日:2026-09-07)
住宅の平均寿命も、日本は約30年である一方、アメリカは約44年、イギリスは約75年とされており、住宅を長く使う文化が根付いている国ほど既存住宅の流通が活発な傾向がうかがえます。住生活基本計画が既存住宅の性能証明・価値評価の仕組みを整えようとしている背景には、こうした国際的なギャップを縮める狙いがあると考えられます。

ここまでの内容を踏まえ、これから買う人は「新築プレミアム」に惑わされず性能で比較することが重要になります。
「新築だから資産価値が高い」という考え方は、これまでほど当てはまらなくなっていきます。不動産のプロが注意点として挙げるのは、価格が高いだけで性能証明のない新築よりも、立地が良く住宅性能をきちんと証明できる中古住宅のほうが、長期的には資産価値を維持しやすいケースがあるという点です。物件を比較する際は、価格や築年数だけでなく、耐震性・省エネ性能・ハザードマップ上の位置づけ・管理状況の4点をあわせて確認することをおすすめします。中古マンションの価格動向を踏まえた買い時の判断はマンション価格2026|新築・中古別データとエリアの見極め方もあわせて参考にしてください。担当者から新築のメリットばかりを強調された場合でも、その場で即決せず、性能証明の書類や管理状況を確認してから判断する姿勢が実務上は推奨されています。
すでに住宅を所有している人や、将来的な売却を視野に入れている人は、この記事で紹介した「下がりやすい家の4条件」に自分の物件が当てはまっていないかを確認しておくとよいでしょう。旧耐震であれば耐震診断・補強の検討、省エネ性能が低ければ断熱リフォームの検討、管理組合の運営に不安があれば管理計画認定の取得状況の確認など、早めに手を打てる余地があります。将来的に売却を考えている場合は、価格が高いタイミングを待つだけでなく、こうした構造的な評価軸の変化を踏まえて判断することが重要です。
購入経験者からよく聞かれるのが、住宅購入は「なぜ買うのか」という理由を明確にしないまま物件見学から始めてしまい、後で条件が定まらず迷走してしまうという失敗パターンです。実務上は、1.購入理由の言語化、2.何年住む想定かのライフプランニング、3.希望条件の整理、4.物件見学という順番を踏むことで、将来の資産価値も含めた納得感のある選択がしやすくなります。また、将来のエリア人口の見通しを確認しておくことも、資産価値を左右する要素として軽視できません。全国的な市況の見通しについては2026年不動産価格の見通し|三極化する市場の読み方と売買タイミングで詳しく解説しています。売却を検討している場合は、複数の不動産会社に査定を依頼し、条件を比較しながら進める一般媒介契約の活用も、実務上よく用いられる方法のひとつです。
住生活基本計画そのものは10年間の政策の方向性を示すもので、控除額や適用条件は毎年度の税制改正で個別に決まります。2026年度税制改正では既存住宅向けの控除期間が拡充されていますが、今後も計画の方向性に沿って制度が段階的に見直されていく可能性があります。控除額の詳細な早見表は個別の税制記事を参照することをおすすめします。
すぐに売れなくなるわけではありませんが、住宅ローンの審査や税制優遇の面で不利になりやすい傾向は強まっていくと考えられます。立地が良ければ売却自体は可能なケースが多いため、耐震診断や補強の状況を整理しておくことが重要です。管理組合として建て替えや大規模修繕の検討を進めている場合は、その進捗状況も購入検討者への説明材料になります。
色がついているからといって一律に購入を避けるべきとは限りません。想定される浸水深や災害の種類、対策の有無によってリスクの度合いは異なります。ハザードマップの色分けの意味を正しく理解したうえで、担保評価や保険加入の条件もあわせて確認することが大切です。同じエリアでも高台か低地か、盛土か切土かといった細かな条件で評価が変わることもあります。
管理計画認定を受けているマンションかどうかは、管理組合や管理会社に確認するほか、自治体の窓口で案内を受けられる場合があります。購入検討時には、重要事項説明の中で確認しておくとよいでしょう。認定を受けていない場合でも、修繕積立金の積立状況や長期修繕計画の有無を個別に確認することでリスクをある程度把握できます。
一概にどちらが良いとは言い切れません。今回の計画で示された4つの評価軸(耐震性・省エネ性能・ハザードリスク・管理状況)に照らして、新築・中古を問わず条件を満たす物件を選ぶという考え方が、今後はより重要になっていきます。価格だけで比較するのではなく、性能証明の有無や将来の流動性まで含めて総合的に判断することをおすすめします。
住生活基本計画は10年という長いスパンの政策方針であり、今日明日で市場が急変するものではありません。ただし、これから住宅を購入する人にとっても、すでに所有している人にとっても、資産価値を左右する評価軸が変わりつつあることは知っておいて損はありません。物件選びや売却のタイミングに迷ったときは、耐震性・省エネ性能・ハザードリスク・管理状況の4点を軸に、不動産会社や専門家に相談しながら判断することをおすすめします。
今回の計画が示しているのは、住宅を「一度買ったら終わり」のものとしてではなく、将来にわたって資産としての価値を保ち続けられるかどうかを意識して選ぶ時代に入ったというメッセージでもあります。特に今後10年は、条件を満たす住宅とそうでない住宅の評価の差が徐々に開いていくと見られるため、購入前・売却前のどちらのタイミングでも、この記事で紹介した評価軸をひとつの判断材料として活用してみてください。人生で最も大きな買い物のひとつである住宅だからこそ、目先の価格だけでなく、10年先の資産価値も見据えた選択を心がけたいところです。