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マンション価格高騰対策として、国土交通省は不動産の短期売買(所有期間5年以下)への課税強化を検討しています。現行では所有5年以下の売却益にかかる税率は約39.63%ですが、投機的な転売を抑えるためさらなる引き上げが議論されています。
この記事でわかること
2026年8月28日、国土交通省は令和9年度(2027年度)税制改正要望を公表し、「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」として、実需に基づかない投機的取引を抑制するための検討を進める方針を示しました。これを受けて同年9月4日には主要メディアが一斉に「短期売買への課税強化案」として報道し、大きな注目を集めています。マンション価格の高騰そのものについては、2026年不動産価格の見通し|三極化する市場の読み方と売買タイミングでも詳しく解説していますが、本記事ではその高騰対策として浮上した「短期売買への課税強化」というテーマに焦点を絞り、制度の内容と背景、現行制度との違い、税負担の試算、そして売却を検討している方が今知っておくべきポイントを整理します。

マンション価格高騰対策としての「短期売買課税強化案」とは、所有期間の短い不動産を売却した際の税負担を今より重くすることで、投機目的の転売を抑制しようとする政策案です。国土交通省が2027年度の税制改正要望として提出し、今後与党内で具体的な制度設計が議論される見通しです。
国土交通省は2026年8月28日、令和9年度税制改正要望事項の中で「新築マンションの価格高騰への対応に係る所要の措置」を掲げました。要望文には「実需に基づかない投機的取引を抑制するための方策について、必要な検討を行い、所要の措置を講じる」と明記されており、具体的な税率や制度の詳細はこの時点では示されていません(出典:東京新聞デジタル、日本経済新聞)。
複数の報道によれば、政府・与党内では土地や建物の短期売買にかかる税金を大幅に引き上げる案が浮上しており、官邸幹部が「法改正し税率を大幅に引き上げたい」との意向を示しているとされています。今後は年末に向けて自民党の税制調査会などで具体的な制度設計が議論される見通しです。2026年9月時点ではあくまで「検討段階」であり、税率の具体的な数値や施行時期は確定していません。
短期売買が問題視されている理由は、実需(自分で住むための購入)ではなく、値上がり益を狙った投機的な転売がマンション価格を押し上げている一因とみられているためです。都心部を中心に一般の実需層が新築マンションを取得しにくい状況が続いており、国土交通省はこの背景に投機的な短期保有・転売の増加があると分析しています。
不動産取引の現場では、契約から入居前の段階で転売され、実際に住むことのないまま次の買い手に渡る「青田転売」に近い動きが一部で見られるとも指摘されています。新築マンションは契約から実際の引き渡し・入居まで1〜3年程度のタイムラグがあることが多く、この間に相場が上昇すれば、住む前に転売するだけで値上がり益を得られてしまう構造があります。こうした短期の値上がり益狙いの取引が価格形成に影響を与えているとの見方が、今回の税制改正要望の背景にあります。
そもそも短期譲渡所得の税率が長期譲渡所得より高く設定されているのは、投機的な土地・不動産取引を抑制するという政策目的が背景にあります。この短期・長期の税率差の仕組み自体は以前から存在していましたが、近年の都心マンション価格の急騰を受けて「現行の税率差だけでは投機的な短期転売を十分に抑止できていないのではないか」という問題意識が強まったことが、今回のさらなる課税強化案につながっています。
なお、投機的な取引の抑制という文脈では、海外投資家による不動産取得を巡る規制の議論も並行して進んでいます。国内投資家・海外投資家を問わず「実需に基づかない取引」をどう見極め抑制するかは、今後の不動産市場を考えるうえで共通の論点といえます(詳しくは外国人は日本の不動産を自由に買える?2026年の規制の行方と価格への影響を参照)。

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、所有期間が5年以下なら「短期譲渡所得」、5年を超えると「長期譲渡所得」に区分され、税率がおよそ2倍違います。この所有期間の長短が、今回の課税強化案の焦点になっています。
譲渡所得税とは、不動産を売却して得た利益(売却価格から取得費・譲渡費用などを差し引いた金額)に対してかかる税金の総称で、実際には所得税と住民税を合わせたものを指します。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は所得税30.63%(復興特別所得税を含む)+住民税9%=合計約39.63%です。
不動産取引の現場でよく誤解されるのが、この税金は「売却価格」そのものにかかるわけではないという点です。実際に課税されるのは、売却価格から購入時の取得費や仲介手数料などの譲渡費用、各種特別控除を差し引いた「利益部分」のみです。含み損が出ている(買った時より安く売った)場合には、そもそもこの税金は発生しません。
一方、売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」となり、税率は所得税15.315%+住民税5%=合計約20.315%に下がります。同じ利益額でも、所有期間が5年を境に税負担がおよそ2倍変わる計算です。
ここで注意したいのが、所有期間の判定基準が「売却した年の1月1日時点」である点です。たとえば2021年6月に取得した物件を2026年7月に売却する場合、実際の所有期間は5年1か月ですが、判定基準日である2026年1月1日時点ではまだ丸5年に達していないため、短期譲渡所得として扱われます。売却時期の1〜2か月のずれが、税率に大きな差を生むことがあるため注意が必要です。なお、相続で取得した不動産は、亡くなった方(被相続人)が取得した時期を引き継いで所有期間を計算するため、相続直後の売却でも長期譲渡所得になるケースがほとんどです。
譲渡所得税の課税対象額は、「収入金額(売却価格)-取得費-譲渡費用-特別控除」という式で算出されます。取得費とは購入時の価格や仲介手数料などを指し、購入時の売買契約書が残っていない場合は、売却価格の5%を取得費とみなす概算取得費という方法も認められています。譲渡費用には、売却時の仲介手数料や建物の解体費用などが含まれます。マイホームを売却した場合に使える「3,000万円特別控除」など、要件を満たせば課税対象額を大きく圧縮できる特例もあります。この特例や具体的な計算式の詳細、確定申告の書き方については不動産売却の譲渡所得税と3,000万円控除|計算・申告を完全解説と不動産売却の確定申告|必要書類・書き方・期限を完全解説で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
なお、不動産を売却する際にかかる税金は譲渡所得税・住民税だけではありません。売買契約書に貼付する印紙税、住宅ローン完済に伴う抵当権抹消登記にかかる登録免許税なども発生します。これらは譲渡所得税と異なり、利益の有無にかかわらず一定額がかかる点に注意が必要です。

課税強化案が実現した場合、税負担はどの程度増えるのでしょうか。具体的な引き上げ幅は未確定のため、ここでは現行の短期・長期の税率差を土台に、仮に短期譲渡の税率が50%に引き上げられた場合を例として独自に試算します。
売却益(譲渡所得)1,000万円・2,000万円・3,000万円のケースで、長期譲渡所得(20.315%)・現行の短期譲渡所得(39.63%)・仮に税率が50%へ引き上げられた場合の税額を比較すると、以下のようになります。
売却益 | 長期譲渡(20.315%) | 現行の短期譲渡(39.63%) | 仮に50%へ引き上げの場合 |
|---|---|---|---|
1,000万円 | 約203万円 | 約396万円 | 約500万円 |
2,000万円 | 約406万円 | 約793万円 | 約1,000万円 |
3,000万円 | 約609万円 | 約1,189万円 | 約1,500万円 |
※当サイト独自試算。税率50%への引き上げは、報道されている「税率の大幅引き上げ」の方向性を踏まえた仮の例示であり、政府の正式な提案数値ではありません。実際の税額は取得費・譲渡費用・特別控除の適用状況により異なります。具体的な税額計算は税理士など専門家にご相談ください。
この試算からわかるように、売却益2,000万円のケースでは、現行の短期譲渡税率(39.63%)でも長期譲渡より約387万円税負担が重く、仮に50%まで引き上げられれば長期譲渡との差は約594万円に拡大します。売却益3,000万円のケースでは、現行制度でも長期譲渡との差は約580万円ですが、仮の引き上げ後には差が約891万円まで広がる計算です。短期保有での売却がいかに税負担面で不利になりやすいかがわかります。
試算の計算方法は単純で、「譲渡所得金額(売却益)×税率」で税額を算出しています。実際の申告では、この譲渡所得金額を算出する段階で取得費・譲渡費用・特別控除を差し引くため、上記の試算より実際の税額が下がるケースも多くあります。あくまで本試算は「同じ売却益が出た場合に、短期か長期かで税率がどれだけ違うか」という比較を目的とした簡易シミュレーションである点にご留意ください。
なお、この試算はあくまで「税率が仮に50%まで引き上げられたら」という一例に基づくシミュレーションです。実際にどの程度の税率になるかは今後の与党税制調査会での議論次第であり、短期譲渡所得の中でもさらに保有期間を細分化して税率に差をつける案や、一定の要件(実需であることの証明等)を満たす場合は適用除外とする案なども考えられます。現時点で確定した制度設計は存在しない点にご留意ください。
今まさに保有している物件の所有期間が5年前後という方は、売却時期の判断がより重要になります。前述のとおり所有期間の判定は「売却した年の1月1日」を基準とするため、あと数か月で長期譲渡所得の扱いに切り替わるタイミングであれば、売却を急がずに待つことで税率がほぼ半分になる可能性があります。
自分の物件がいつから長期譲渡所得の扱いになるかは、購入時の売買契約書や登記事項証明書に記載された取得日から確認できます。たとえば2021年12月に取得した物件であれば、2027年1月1日時点で所有期間が5年を超えるため、2027年中に売却すれば長期譲渡所得として扱われます。反対に2026年12月に慌てて売却してしまうと、わずか1か月足らずの差で短期譲渡所得の高い税率が適用されてしまう計算になります。
ただし、税率だけを見て売却時期を先延ばしにするのは早計です。マンション価格の変動やご自身のライフプラン(住み替え・資金需要のタイミングなど)とあわせて総合的に判断することが重要です。不動産取引の現場では、あと数か月で長期譲渡に切り替わることに気づかないまま契約を急いでしまい、想定より高い税額を後から知って驚くケースがあるといわれています。売却を検討し始めた段階で、まず自分の物件が「いつから長期譲渡所得になるか」を確認しておくことをおすすめします。

今回の課税強化案の背景には、都心部で実際に増えている短期転売の実態があります。国土交通省の調査によると、都心6区で保存登記から1年以内に転売された新築マンションの割合は12.2%に達しています。
国土交通省が2025年11月に公表した「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引実態の調査・分析」によると、千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・渋谷区の都心6区では、2024年1〜6月に保存登記された新築マンションのうち12.2%が1年以内に転売されていました。これは2018〜2022年の期間中の最大値(2021年の4.6%)の約2.7倍にあたる水準です(出典:国土交通省「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引実態の調査・分析について」、LIFULL HOME'S PRESS)。
短期転売そのものが直ちに違法・不当というわけではありませんが、実需を上回るペースで短期売買が増えていること自体が、価格上昇圧力として国土交通省に問題視されている状況です。特に都心6区は海外投資家からの人気も高く、値上がり期待の強いエリアほど短期転売の割合が高くなる傾向があるとされています。新築マンション市場全体の価格動向・二極化についてはマンション価格2026|新築・中古別データとエリアの見極め方でも詳しく取り上げていますので、あわせてご参照ください。
当サイトが国土交通省「不動産情報ライブラリ(REINFOLIB)」の実取引データを独自集計したところ、都心3区(港区・千代田区・渋谷区)の中古マンション㎡単価(中央値)は、2025年第1四半期から2026年第1四半期の1年間で最大32.9%上昇していることが確認できました。
エリア | 2025年Q1 ㎡単価中央値 | 2026年Q1 ㎡単価中央値 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
港区 | 約186.7万円 | 約248.1万円 | +32.9% |
千代田区 | 約166.7万円 | 約200.0万円 | +20.0% |
渋谷区 | 約155.0万円 | 約166.4万円 | +7.4% |
※当サイトが集計した国土交通省の実取引データ(不動産情報ライブラリ)をもとに作成。中古マンション等の取引価格を専有面積で割った㎡単価の中央値を算出。個別物件の条件により実際の価格は異なります。
同時に注目したいのが、取引件数の変化です。港区では2025年Q1の175件から2026年Q1には70件へ、千代田区でも56件から21件へと大幅に減少しています。渋谷区も119件から36件と3分の1以下に落ち込んでいます。価格の急上昇とともに取引件数が減っている状況は、実需層の手控えが進んでいる可能性を示しており、投機的な取引の抑制が求められる背景の一端がうかがえます。
ただし、取引件数の減少には金利動向や供給戸数の変化など複数の要因が影響している可能性があり、価格上昇と取引減少の因果関係を単純に断定することはできません。あくまで「価格上昇と取引減少が同時に進んでいる」という事実として捉え、今後の推移を注視していく必要があります。
不動産のプロが注意点として挙げるのは、こうした価格高騰局面では「今のうちに買っておかないと、もっと上がってしまう」という焦りから、実需層が本来の予算を超えた無理な購入に踏み切ってしまうケースがあるという点です。短期売買への課税強化は、こうした過熱した市場に一定の落ち着きをもたらす効果が期待される一方で、実需層にとっても住宅ローン控除や資金計画への影響がないか、今後の制度詳細を注視しておく必要があります。

課税強化案は現時点ではまだ「要望」段階であり、正式な税制改正の決定・施行はこれからの議論次第です。売却を検討している方は、慌てて判断するのではなく、今後のスケジュールを把握したうえで対応を考えることが重要です。
2026年8月28日時点で決まっているのは、国土交通省が令和9年度(2027年度)税制改正要望として「投機的取引を抑制するための措置の検討」を掲げたという事実のみです。具体的な税率や適用開始時期は、今後年末にかけて行われる与党税制調査会などでの議論を経て決定される見通しです。過去の税制改正の例では、各省庁の要望が8月末に公表された後、年末の税制改正大綱で方向性が固まり、翌年の通常国会で関連法案が成立、その翌年度から施行されるという1〜2年程度の流れをたどることが一般的です。本改正についても2027年度以降の適用になる可能性が高いと考えられますが、あくまで現時点の見通しであることにご留意ください。
また、税制改正では、施行日より前に契約・引き渡しが完了した取引を対象外とする「経過措置」が設けられることも少なくありません。今回の課税強化案についても、実際の制度設計の中でどのような経過措置が置かれるかによって、既存の保有者への影響範囲は大きく変わってきます。制度の議論が進む中では、国土交通省や財務省の公表資料、報道の続報を継続的にチェックしておくことが重要です。
「課税が強化される前に急いで売るべきか」という質問をよく耳にしますが、拙速な判断は避けるべきです。制度の具体的な内容(税率・適用対象・経過措置の有無など)が固まっていない段階で先走って動くと、結果的に不利な条件で売却してしまうリスクもあります。
実務上、多くのケースで重視すべきポイントは以下の3点です。
特に、投機目的ではなく実需(自宅として住んでいた、または相続した不動産)で保有している方は、今回の課税強化案が主眼としている「投機的な短期転売」とは事情が異なります。焦って制度の詳細も分からないまま動くのではなく、正式な制度設計が固まった段階で改めて判断することをおすすめします。
不動産取引の現場では、こうした税制ニュースが出るたびに「今すぐ売却すべきか」という相談が増える傾向があるといわれています。しかし、税制はあくまで売却判断の一要素にすぎません。ご自身の物件の所有期間、地域の価格動向、そして住み替えや資金計画といったライフプラン全体を踏まえたうえで、必要であれば不動産会社の査定や税理士への相談を活用しながら判断することが大切です。
売却した年の1月1日時点での所有期間で判定します。実際の所有期間が5年を超えていても、その年の1月1日時点でまだ5年に達していなければ短期譲渡所得として扱われるため、売却時期には注意が必要です。
相続した不動産は、亡くなった方が取得した時期を引き継いで所有期間を計算するため、多くの場合すでに長期譲渡所得の扱いになります。今回の課税強化案が主眼とする投機目的の短期転売とは事情が異なりますが、正式な制度の対象範囲は今後の議論を確認する必要があります。
2026年9月時点では、国土交通省が2027年度税制改正要望として検討を要望した段階であり、具体的な施行時期は決まっていません。年末にかけての与党税制調査会での議論を経て具体化する見通しです。
今回の議論は主に投機的な短期転売を対象としたものとされていますが、居住用財産に対する特例(3,000万円特別控除など)との関係を含め、対象範囲の詳細はまだ示されていません。実際に自宅の売却を検討している場合は、制度の詳細が固まった段階で改めて確認することをおすすめします。
2026年9月時点では、具体的な引き上げ幅は公表されていません。官邸幹部が「税率を大幅に引き上げたい」との意向を示していると報じられていますが、正式な数値は年末の与党税制調査会などでの議論を経て決まる見通しです。本記事の独自試算は、あくまで検討の方向性を踏まえた仮の例示であり、公式な提案数値ではないことにご注意ください。
マンションの売却時期や税負担の見積もりに不安がある場合は、不動産会社や税理士などの専門家に相談しながら、最新の制度動向を踏まえて判断することをおすすめします。制度の詳細が固まり次第、本記事も最新情報に更新していきます。