読み込み中...
読み込み中...
2026年7月15日、観光庁・国土交通省・厚生労働省は、自治体が条例で民泊を「ゼロ日」(新規の禁止)にできるとする通知を出しました。弊害が出ている地域では、猶予期間を置いて既存の民泊も制限できます。
この記事でわかること
民泊の規制は、通知のあと各地で一気に具体化しています。9月8日には新宿区が住宅地での新設を原則禁止する方針を発表し、台東区は住宅地などを「ゼロ日」にする条例改正案を区議会に出しました。10月26日には京都市が、11月2日に「民泊規制案」を議題とする有識者会議を開くと発表しています。この記事では、通知の中身、自治体ごとの規制、マンションの住民・買い手・投資を考える人が確認しておきたいことを、一次情報をもとに整理します。

民泊の規制は、2026年7月15日の通知で大きく変わりました。自治体が条例で、住宅地などでの新しい民泊を禁止できる(ゼロ日規制)と国が初めて認めたためです。これまで国はゼロ日規制を「適切ではない」としてきました。
民泊新法とは、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法のことです。住宅を使って有料で人を泊める事業を、自治体への届出だけでできるようにした法律で、営業できるのは1年間で180日までです。
そのうえで法18条は、生活環境の悪化を防ぐために、都道府県や保健所設置市・特別区が条例で区域と期間を定めて営業を制限できるとしています。たとえば新宿区は住居専用地域で月曜正午から金曜正午までの営業を認めていません。
一方で、国の住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)は、1年中の営業を一律に制限することは「本法の目的を逸脱するものであり、適切ではない」としてきました。このため、条例で民泊を全面的に禁止する「ゼロ日規制」はできないと考えられていました。
7月15日の通知は、厚生労働省・国土交通省・観光庁の担当課長の連名による「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」です。自治体ができることとして、次の4点が示されました。
できること | 主な内容・条件 | 既存の民泊 |
|---|---|---|
1. 新規の禁止(ゼロ日規制) | 住宅地や学校などの周辺で静かな環境が損なわれるおそれ、または定住人口・地域コミュニティの維持が難しくなるおそれがある区域で、新しい民泊を禁止するか、営業日を土日祝前日などに限る | 対象外(新規のみ) |
2. 既存の民泊の制限 | すでに多くの民泊があり、静かな居住環境が著しく損なわれている、ほかに適切な対策がないといった強い必要性がある場合 | 猶予期間を置いて禁止・営業日の限定が可能 |
3. ICTを使った管理の義務付け | 騒音計や出入口のカメラを設置してモニタリングし、過去1年分などのデータを保存させる | 条例の定めによる |
4. その他の規制 | チェックイン・チェックアウトの時間や、施設の定員の上限を決める | 条例の定めによる |
新規を禁止した区域では、民泊の事業者が代わると新しく届出をし直す必要があるため、その住宅では営業を続けられません。物件を売買しても「民泊付き」で引き継げない点は、投資を考える人にとって重要です(出典:観光庁 報道発表(2026年7月15日))。
通知は、旅館業の簡易宿所なども同じように規制するなど、ほかの規制との整合に注意するよう求めています。ガイドラインへの反映は「今後、然るべき時期に」とされ、10月27日時点の観光庁の掲載版(2024年12月24日改正)にはまだ反映されていません。

通知のあと、民泊が多い東京23区と京都市では、住宅地での新規を禁止する条例が相次いで準備されています。台東区は2026年10月から新規の平日営業を禁止し、豊島区は12月16日から既存を含めて年120日に制限します。
主な自治体の規制を、公式の発表で確認できた範囲で一覧にしました。報道でしか確認できない内容は「報道」と記しています。
自治体 | 施行日・時期 | 制限の内容 | 既存の民泊 |
|---|---|---|---|
新宿区 | 未定(9月8日に方針発表。パブリックコメントを経て条例改正。報道では2027年2月の区議会に提出予定) | 住居専用地域・住居地域・準工業地域・文教地区で新規を禁止。近隣商業・商業地域は年120日(春・夏・冬休み)まで | 施行から2年後に適用 |
台東区 | (1)2026年10月1日施行 (2)2027年1月1日(9月8日に区議会へ提出) | (1)区全域で月曜正午〜土曜正午は営業できない(祝日・年末年始を除く)(2)中高層住居専用地域と文教地区は1年中営業できない | (1)(2)とも施行後の届出が対象。指導・改善命令は既存にも適用 |
豊島区 | 2026年12月16日 | 区内全域で年120日(春3/15〜4/10・夏7/1〜8/31・冬12/15〜1/14)まで。住居専用・住居・準工業地域・文教地区(区の約7割)は新規不可 | 営業期間の制限は既存にも適用 |
渋谷区 | 2026年7月1日 | 制限区域に住居地域・準住居地域を追加(制限区域で営業できるのは年63日程度)。例外は同じ建物などに住む家主の個人に限定 | 6月30日までの届出は改正前のルール |
大田区 | 未定(8〜9月に意見募集) | 案:住居専用地域などと小中学校の周囲100mで新規不可。営業は土曜正午〜月曜正午に限定 | 案:防犯カメラなどの義務は猶予期間後に適用 |
(出典:新宿区長定例記者会見・台東区・台東区議会 第84号議案・豊島区・渋谷区・大田区。2026年10月27日時点)
新宿区は届出住宅が2025年度末で3,749件と全国最多で、区に寄せられた届出住宅への苦情は2021年度の70件から2025年度は924件に増えました(新宿区「届出状況及び苦情処理について」)。台東区の(2)の改正案は、10月27日時点で区議会サイトに議決結果が載っていません。可決されれば2027年1月から適用されます。
渋谷区では改正後、新しい届出がほぼ止まりました。観光庁の公表データでは、7月15日から9月15日までの2か月の届出は3件だけでした。同じ期間に新宿区は271件、台東区は143件の届出があり、規制が始まる前の駆け込みとみられる動きもあります。
京都市はすでに、住居専用地域での営業を1月15日正午から3月16日正午までの約60日に限っています(家主居住型などを除く)。そのうえで「京都市にふさわしい民泊の在り方検討会議」を設け、2026年度中の条例改正の提案を目指しています。報道によると、8月31日の会議で示された素案は、住居専用地域などで営業日数の上限を0日とし、新規の開業を事実上禁止する内容です。既存の民泊は対象外とされています。
大阪市は、国家戦略特区の制度を使った「特区民泊」の新規受付を2026年5月29日で終えました。それまでに認定を受けた施設は従来どおり営業できます(出典:大阪市)。大阪市は住宅宿泊事業(民泊新法)の届出も多く、9月15日時点で届出6,267件のうち4,224件が廃止されています。

民泊は増え続けているように見えますが、これまでの届出67,932件のうち24,895件(36.6%)はすでに事業を廃止しています(2026年9月15日時点)。当サイトが観光庁の公表資料(11時点)を集計した結果です。
時点 | 届出件数(累計) | 事業廃止(累計) | 届出住宅数 | 廃止率 |
|---|---|---|---|---|
2019年9月 | 20,261 | 1,629 | 18,632 | 8.0% |
2021年9月 | 29,720 | 11,193 | 18,527 | 37.7% |
2023年9月 | 35,726 | 15,022 | 20,704 | 42.0% |
2024年9月 | 43,653 | 16,996 | 26,657 | 38.9% |
2025年9月 | 55,377 | 20,131 | 35,246 | 36.4% |
2026年9月 | 67,932 | 24,895 | 43,037 | 36.6% |
※届出住宅数=届出件数−事業廃止件数。廃止率=事業廃止件数÷届出件数(いずれも累計)。出典:観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」をもとに当サイト集計。
届出住宅は2020〜2022年に減り、2022年9月には18,190件まで落ち込みました。その後は急増し、2023年9月から2026年9月の3年で約2.1倍になっています。廃止率が40%前後から36%台に下がったのは、廃止が止まったからではなく、新しい届出がそれ以上の速さで増えたためです。

自治体別では、東京23区の届出住宅が17,213件と全国の40.0%を占めます。最も多い新宿区(3,980件)の廃止率は31.0%で、大阪市は67.4%、札幌市は50.2%と、半数以上が廃止された自治体もあります。観光庁の資料には廃止の理由は書かれていません。採算や需要の変化、自治体の指導などさまざまな理由が考えられますが、届出をした民泊が長く続くとは限らないことが数字から読み取れます。

分譲マンションでは、管理規約で民泊を禁止できます。規約で禁止されていれば、区分所有者は民泊の届出ができません。購入・賃貸の前に確認したいのは、規約の定めと、建物や周辺で実際に民泊が行われていないかの2点です。
国土交通省のマンション標準管理規約は、専有部分の用途を定める12条で、住宅宿泊事業を「可能とする場合」と「禁止する場合」の両方の規定例を示しています。国のガイドラインでは、「宿泊料を受けて人を宿泊させる事業」を禁止する規約も民泊の禁止に当たり、家主同居型だけを認める規約ではそれ以外の民泊は禁止と解されます。
注意したいのは、規約に民泊の定めがない場合です。ガイドラインは、総会や理事会で民泊を禁止する方針の決議がなければ「禁止する意思がない」と扱うとしています。つまり規約が古いままのマンションでは、民泊の届出が出される余地があります。台東区の条例のように、区分所有者に規約で民泊の可否を定めるよう求める自治体もあります。
中古マンションを買うときは、管理規約と使用細則、総会の議事録を取り寄せて、民泊の条項と最近の決議を確認しましょう。仲介会社を通じて、管理会社が作る重要事項調査報告書で確認する方法もあります。管理状態の確認全般は中古マンション購入完全ガイド|築何年まで買える?相場と管理、契約前の説明で何を確かめるかは重要事項説明書・売買契約書とは|手付金・契約不適合責任を解説で解説しています。
届出をした民泊には、届出番号が書かれた標識を玄関など見やすい場所に掲げる義務があります(住宅宿泊事業法13条)。スーツケースを持った人の出入りが続くのに標識が見当たらない部屋は、無届けの違法民泊の疑いがあります。
標識の届出番号は、自治体が公表する届出住宅の一覧と照らし合わせて確認できます。新宿区は所在地・届出番号・届出日などの一覧を毎月10日に更新しており、台東区も条例で所在地・届出番号・届出日を公表しています。全国をまとめて検索できる公式の仕組みは確認できなかったため、物件のある自治体の一覧で確認しましょう。旅館業の許可施設や特区民泊は別の制度なので、民泊の一覧に載っていなくても違法とは限りません。
民泊トラブルの相談先は、状況によって次のように使い分けます。
深夜の騒ぎなど、その場で危険を感じる場合は警察に連絡してください。

民泊を前提に物件を買う場合、最大のリスクは買ったあとに条例で営業日数が減ったり、営業できなくなったりすることです。7月の通知で、自治体はそうした規制をしやすくなりました。
これまでの条例の多くは、施行前の届出には従前のルールを適用してきました。しかし豊島区は12月16日から既存の民泊にも年120日の制限をかけ、新宿区も施行2年後に既存へ適用する方針です。通知も、強い必要性がある場合は猶予期間を置いて既存を制限できるとしています。「すでに届出済みだから安心」とは言えません。
民泊のほかに宿泊施設を営む方法として、旅館業の許可(簡易宿所など)や特区民泊があります。ただし新宿区は小規模な旅館業施設の新設禁止も打ち出しており、大阪市は特区民泊の新規受付を終えました。宿泊税の導入・引き上げが観光物件の収益に与える影響は出国税3倍&宿泊税ラッシュ|観光物件の収益は?で解説しています。
不動産投資の実務では、出口(売却)まで見通して物件を選ぶのが基本です。民泊の収入を前提にした価格で買うと、規制で民泊ができなくなったときに収益も売却価格も下がりやすくなります。
民泊を考えるなら、民泊をやめて普通の賃貸や自宅として使っても成り立つ立地・価格かを基準に選ぶと、規制のリスクを抑えやすくなります。管理規約で民泊が禁止されているマンションでは、そもそも民泊はできません。不動産投資で起こりやすい失敗は不動産投資の失敗10パターン|初心者の罠と回避術も参考にしてください。具体的な判断は、不動産や法律の専門家に相談することをおすすめします。
民泊(住宅宿泊事業)は届出制で年180日まで、旅館業の簡易宿所は許可制で営業日数の上限がありません。簡易宿所は建物の用途の規制により、住居専用地域では原則として営業できません。
項目 | 民泊(住宅宿泊事業) | 旅館業(簡易宿所) | 特区民泊 |
|---|---|---|---|
根拠法 | 住宅宿泊事業法 | 旅館業法 | 国家戦略特別区域法 |
手続き | 届出 | 許可 | 認定 |
営業日数の上限 | 年180日(条例でさらに制限あり) | なし | なし(2泊3日以上の滞在が条件) |
住居専用地域 | 営業できる(条例で制限・禁止あり) | 原則できない | 自治体の定めによる |
特区民泊とは、国家戦略特区に指定された地域で、自治体の認定を受けて外国人旅行者などを泊める制度です。大阪市や東京都大田区などで行われ、営業日数の上限はありません。大阪市は2026年5月29日で新規受付を終えています。
まず自治体の民泊(住宅宿泊事業)のページで、制限区域と期間を確認します。制限は用途地域で決まることが多いため、自治体の都市計画図(地図情報サービス)で自宅の用途地域を調べると判断しやすくなります。
自治体によります。台東区・渋谷区の改正は施行後の届出だけが対象ですが、豊島区は2026年12月16日から既存にも年120日の制限をかけ、新宿区は施行2年後に既存へ適用する方針です。
条例は自治体ごとに、これからも変わります。住まいの購入や投資を考えるときは、物件のある自治体の最新の発表を確認し、必要に応じて専門家に相談しましょう。
最終更新日:2026年10月27日(自治体の規制の一覧は2026年10月27日時点)