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この記事でわかること
入籍前の同棲カップルや事実婚のパートナーが共有名義で不動産を購入することは、法律上可能です。しかし法的な保護が薄い未婚状態での共有名義には、相続・税金・別れた際の処理など、法律婚にはない固有のリスクが存在します。近年、婚活よりも先に生活を共にし、不動産を共同購入するカップルが増えている一方で、別れた際の法的トラブルも増加しているのが現状です。この記事では、同棲・事実婚カップルが不動産購入を検討する際に必ず知っておくべきリスクと対策を詳しく解説します。
結論から言えば、入籍前・同棲中・事実婚のカップルでも共有名義で不動産を購入することは可能です。ただし、法律婚のカップルと比べてさまざまな制約があります。
現金での購入であれば、2人の資金拠出割合に応じた持分比率で共有名義登記を行うことができます。例えばAが1,000万円、Bが500万円を出資した場合、持分は2:1(A:3分の2、B:3分の1)となります。この場合、2人の婚姻状況は問われません。
住宅ローンを利用する場合は注意が必要です。多くの金融機関では、住宅ローンの連帯債務(一つのローンを2人で借りる)の条件として「法律上の配偶者」を要件としています。ただし最近では、事実婚・同性パートナー関係への対応を進める金融機関も増えています。住宅ローンの申し込み前に、候補の金融機関に事実婚・同棲での申し込みが可能かを確認してください。
ペアローン(2人が別々にローンを組む)であれば、法律婚でなくても利用できる金融機関があります。ただしペアローンは連帯保証と異なり、互いが相手のローンの連帯保証人となる形ではなく、それぞれが独立したローン契約者となる点に注意してください。
最も重大なリスクの一つが相続権の問題です。事実婚・同棲のパートナーは、法律上の相続人ではありません。万が一パートナーが亡くなった場合、パートナーの持分は法定相続人(パートナーの親族)に相続されてしまいます。
例えば、AとBが半分ずつ持分を持つ不動産でAが死亡した場合、Aの持分(2分の1)はAの法定相続人(両親・兄弟など)に相続されます。その結果、BはAの家族と不動産を共有するという望まない状況になる可能性があります。
対策:パートナーに持分を遺言で残す「遺言書」の作成、または「公正証書遺言」の準備が有効です。ただし遺言でも「遺留分(法定相続人が最低限主張できる相続分)」の問題が残るため、専門家(弁護士・司法書士)への相談が推奨されます。
法律婚の場合は「配偶者控除」(相続税では1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い方が非課税)を利用できますが、事実婚・同棲のパートナーには適用されません。不動産の相続時に大きな税負担が発生する可能性があります。
また、住宅ローン控除を二人で受けるための要件も、法律婚か事実婚かによって異なる場合があります。購入前に税理士または国税庁の相談窓口で確認してください。
共有名義の不動産を売却・大規模リフォームするには、共有者全員の同意が必要です。関係が破綻してパートナーが協力しない場合、自分の意思だけでは売却も改修もできなくなります。これは離婚した夫婦でも同じ問題が起きますが、法律婚と異なり事実婚には財産分与の法的権利がないため、よりトラブルが長期化するリスクがあります。
なお、自分の持分だけを第三者に売却することは理論的には可能ですが、共有持分だけを買う買い手は一般的な市場ではほぼいません(共有持分専門の買取業者に低価格で売却する方法は存在します)。
ペアローンや連帯債務でローンを組んでいる場合、パートナーがローン返済を止めた場合に自分が残債を全額負担しなければならないケースがあります。関係が破綻した後もローン返済の義務だけが残るという状況は、精神的にも経済的にも大きな負担です。
パートナーのローン返済分を自分が肩代わりした場合や、資金拠出割合と持分比率が一致しない場合に、贈与税が課税されることがあります。例えばAがローン全額を返済しているにもかかわらず、持分が5:5になっていると、実質的なBへの贈与とみなされる可能性があります。資金の拠出割合と持分比率を正確に一致させることが重要です。
関係が変化した場合に共有名義を解消する主な方法は以下の3つです。
一方が不動産を継続して所有したい場合、相手の持分に相当する金額を支払って単独名義に変更します。買い取り価格は持分比率×時価で決まります。この場合、所有権移転登記と譲渡所得税(売った側)・不動産取得税(買った側)の問題が生じるため、税理士に相談してください。
共有者全員の合意があれば、不動産全体を売却して代金を持分比率に応じて分けることができます。この方法が最もシンプルですが、互いの合意が前提となります。
合意が得られない場合、共有者の一方が裁判所に「共有物分割請求」を申し立てることができます。裁判所は通常「売却して代金を分ける(換価分割)」を命じます。この方法は時間・費用・精神的負担が大きいため、あくまで最終手段です。
購入時に「別れた際はどうするか」を明記した合意書(覚書)を作成しておくことをおすすめします。例えば「関係解消の際は一方が相手の持分を時価で買い取る」「売却して均等に分ける」などの取り決めを文書化します。できれば公正証書(公証役場で作成する法的効力の高い文書)として作成しておくと、将来のトラブルを防ぐ効果があります。
不動産購入時の資金拠出割合(自己資金・ローン負担)に応じた持分で登記することが重要です。実際の拠出割合と持分比率が異なると、差額分が贈与とみなされて贈与税が発生するリスクがあります。ローン返済が始まった後も、拠出割合に変化が生じた場合は専門家に相談してください。
パートナーが亡くなった場合に備え、互いに相手へ持分を遺贈する内容の遺言書を準備しておくことをおすすめします。特に「公正証書遺言」は証拠力が高く、遺産分割協議でのトラブルを防ぎやすいです。ただし遺留分の問題があるため、弁護士に相談しながら作成することを推奨します。
不動産購入を機に入籍するカップルは少なくありません。法律婚の場合、配偶者への法定相続権・税制優遇・財産分与権などの法的保護が大幅に充実します。不動産購入という大きな決断のタイミングで、婚姻のスケジュールについてもパートナーと話し合うことをおすすめします。
入籍前に共有名義で購入した不動産は、入籍後も共有名義のまま維持されます。入籍によって自動的に単独名義に変わったり、持分比率が変わったりすることはありません。入籍後に単独名義に変更したい場合は、改めて持分の移転登記が必要です。
ただし入籍後は以下の点で状況が改善されます。
入籍後に共有名義から単独名義に変更する場合、夫婦間の贈与については「居住用財産の贈与税の特例(2,000万円まで非課税)」が利用できる場合があります。詳しくは税理士に相談してください。
同棲・事実婚カップルが不動産購入を検討する際には、以下の項目についてパートナーとあらかじめ話し合っておくことが重要です。
共有名義の不動産の固定資産税は、共有者の代表者(代表納税者)に一括で課税・通知が届きます。代表者が全額を支払い、その後持分比率に応じてパートナーから精算するのが一般的な対応です。
共有名義の住宅でそれぞれがローンを負担している場合、それぞれが住宅ローン控除を受けられる可能性があります。ただし事実婚・同棲状態でのローン控除適用要件は金融機関・税務署によって判断が異なるため、購入前に確認することが必要です。
マイホームを売却する際に最大3,000万円の特別控除(譲渡所得から差し引ける)が利用できます。共有名義の場合、共有者それぞれが3,000万円の控除を受けられる可能性があります(条件あり)。ただし「生計を一にする配偶者・親族への売却」には控除が適用されない規定があるため、事実婚パートナーへの売却には注意が必要です(国税庁のWebサイトで最新情報を確認してください)。
2026年現在、全国200以上の自治体でパートナーシップ制度が導入されています。近年、自治体によっては「パートナーシップ証明書」を発行し、同性カップルや事実婚カップルの関係を証明する制度を設けています。一部の金融機関ではこの証明書を活用してペアローンの申し込みができるようになっています。お住まいの自治体でパートナーシップ制度が利用できるか確認してみてください。
2026年現在、日本では法律上の同性婚は認められていません(各地での訴訟・議論は継続中)。ただし住宅ローンの引き受けや賃貸契約で同性カップルへの対応を進める金融機関・不動産会社が増えており、個別の相談により対応できるケースが増えています。同性カップルの場合も、公正証書遺言・持分の正確な登記・合意書の作成は同様に重要です。関係の形に関わらず、「万が一の時にどうなるか」を事前に整理しておくことが、大切なパートナーとの安心した生活基盤の構築につながります。
関係が終わったにもかかわらず、元パートナーが持分を手放さず「共有名義を解消してほしい」という要求に応じないケースがあります。この場合、自分の持分だけを売却することも難しく、法的手続き(共有物分割請求)を取るしか解決策がないことがあります。事前の合意書がない場合、裁判所での解決に1〜2年以上かかることも珍しくありません。
このトラブルを防ぐには、購入時に公証役場で「別れた場合は6ヶ月以内に一方が買い取るか売却に合意する」という内容の公正証書を作成しておくことが有効です。
ペアローンを利用していた場合、元パートナーが自分の分のローン返済を止めてしまうと、金融機関から連帯保証人(もしくは競売)として自分に請求が及ぶことがあります。住宅ローンの滞納は信用情報にも傷がつくため、万が一の備えとして生命保険・就業不能保険などで相手のリスクをカバーする方法も検討してください。
パートナーが急死し、その家族(両親・兄弟)が「自分の親(子)の持分は自分たちが相続する」と主張して退去を求めてきたケースがあります。遺言書がない場合、法律上この主張は正当であり、事実婚のパートナーには法定相続権がありません。この問題を防ぐには互いに「相手に持分を遺贈する」内容の公正証書遺言を作成しておくことが最善策です。
資金拠出割合と持分比率を合わせずに登記した場合、後から税務署に贈与とみなされて追徴課税されるリスクがあります。例えば2,000万円の物件をA(1,500万円出資)・B(500万円出資)で購入したにもかかわらず、持分を5:5で登記した場合、Aから Bへの500万円の贈与とみなされます。
同棲・事実婚カップルが不動産を購入する場合、以下の物件タイプが比較的リスクを管理しやすいです。
中古マンションは新築より購入価格が低く、将来売却する際の選択肢が広いです。万が一関係が変化しても「売却して代金を分ける」という選択肢が取りやすいです。新築と異なり、売却時の値下がり幅が小さいため、売却損のリスクも相対的に低くなります。詳しくは中古マンション購入完全ガイドを参照してください。
価格が低く・流動性の高い(売りやすい)物件の方が、関係の変化に対応しやすいです。地方の広い物件より、都市部のコンパクトなマンション・戸建ての方が将来の柔軟性が高くなります。なお、不動産購入全体の流れについてははじめての不動産購入の流れ全8ステップも参照してください。
多くの金融機関では法律婚の配偶者を前提としていますが、事実婚・同棲状態でもペアローンや連帯債務に対応する金融機関が増えています。候補の金融機関に個別に確認することをおすすめします。また入籍後に共同でローンを組み直す(借り換え)という選択肢もあります。
入籍前に購入・所有していた不動産は「特有財産(個人の財産)」として扱われ、原則として婚姻後の財産分与の対象外となります。ただし婚姻後にローン返済を続けた場合、その分が「婚姻中の共有財産」として扱われる場合があり、離婚時の財産分与に影響するケースがあります。詳しくは弁護士に相談してください。
双方の合意があれば①一方が持分を買い取る、②売却して代金を分けるという方法で解消できます。合意が得られない場合は裁判所への共有物分割請求という手段がありますが、時間・費用がかかります。購入時に合意書(覚書)を作成しておくことが、トラブルを防ぐ最善策です。裁判所での解決には時間・費用・精神的負担が大きくかかるため、事前の合意書作成が最も有効な予防策です。
相手の持分を売買または贈与で取得し、所有権移転登記を行うことで単独名義にできます。売買の場合は譲渡所得税・不動産取得税が発生する可能性があり、贈与の場合は贈与税の問題が生じます。移転の際は必ず司法書士・税理士に相談してください。
法的リスクを最小化するなら「入籍後に不動産購入」が最もシンプルです。法律婚後は配偶者への法定相続権・税制優遇・財産分与権が自動的に付与されるため、複雑な手続きなしに互いの資産を保護できます。どうしても入籍前に購入する必要がある場合は、公正証書遺言・合意書の作成など事前の備えを万全にしてください。
関係の確実性が高くない段階では賃貸から始めることをおすすめします。賃貸であれば関係の変化に応じてフレキシブルに対応でき、共有名義の解消という複雑な問題が生じません。購入は「入籍後」または「公正証書で十分な合意が取れた後」のタイミングで検討することが、長期的なリスク管理として賢明です。
同棲・事実婚状態での不動産購入は複雑な法的問題を伴います。購入を決める前に、弁護士・司法書士・税理士など法律・税務の専門家に相談することを強くおすすめします。複雑な法的・税務的リスクを正しく理解した上で、パートナーとオープンに話し合い、万全の準備をして判断してください。離婚と不動産については離婚したら家はどうなる?も参考になります。また、ライフステージに応じた住まい選びの参考として賃貸vs持ち家のコスト比較もあわせてご覧ください。