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賃貸と持ち家、どちらが得かは「その家に何年住み続けるか」でほぼ決まります。物件価格5,000万円・家賃16万円という標準的な条件で独自試算したところ、損益分岐は居住14年前後という結果になりました。
この記事でわかること
「賃貸と持ち家、結局どちらが得なのか」は住まいを考える誰もが一度は突き当たる問いです。しかし多くの解説は「ライフスタイル次第」で終わってしまい、具体的に何年住めば損得が逆転するのかまでは示しません。
この記事では、標準的な条件を設定した独自シミュレーションで損益分岐年数を試算し、家賃上昇率・金利・資産価値という3つの変数がその年数をどう動かすかを明らかにします。そのうえで、属性・世帯タイプ別の判断基準まで踏み込んで解説します。

日本経済新聞の試算によると、30代共働き夫婦が東京都内で賃貸から持ち家に移る想定でシミュレーションした場合、持ち家・賃貸ともに50年間の住居費が1億円を超える結果になりました。これは3年前の試算より約2,000万円増加しており、インフレの影響で住居費の負担が重くなっていることを示しています(出典:日本経済新聞「居住コスト、持ち家・賃貸とも50年で1億円超 3年前より2000万円増」、2026年3月12日)。持ち家・賃貸のどちらを選んでも住居費が住宅ローンや家賃だけでなく、税金・修繕費・更新料まで含めた総額で捉える必要がある時代になったということです。
家賃相場そのものも上昇しています。総務省統計局の消費者物価指数(民営家賃)は2026年1月時点で前年同月比+0.7ポイント(2020年を100とした指数で101.1)と、既存の入居者を含む全国平均では緩やかな上昇にとどまっています。一方で、東京都心部を中心とした新規契約時の家賃はより急なペースで上がっており、既存契約者が体感する上昇と、これから住み替える人が直面する上昇には差があります。地価ナビが別記事でまとめた最新データでは、東京都のファミリー向け家賃は16万円台、シングル向けでも11万円を超える水準に達しています(東京の家賃が限界突破!ファミリー16万・シングル11万超で賃貸vs購入どっちが得?)。
一方の持ち家側も、住宅ローンを組む世帯の平均像が変化しています。住宅金融支援機構「2024年度フラット35利用者調査」によれば、利用者の平均世帯年収は669万円(前年度比8万円増)、平均年齢は44.5歳と、いずれも上昇傾向が続いています(出典:住宅金融支援機構「2024年度フラット35利用者調査」)。年収・年齢がともに上がっているのは、物件価格の上昇に合わせて借入額が増え、購入に踏み切れるタイミングが後ろ倒しになっていることの裏返しでもあります。
住宅価格の高止まり・金利の緩やかな上昇・家賃上昇という3つの変化が重なった結果、「賃貸なら安心」「持ち家なら安心」と単純に言い切れない状況になっています。次章では、この状況を前提にした独自シミュレーションで、感覚論ではなく数字で損益分岐を確認します。

結論から言うと、標準的な条件下では居住14年前後が損益分岐の目安になります。14年より長く住み続けるほど持ち家が有利になり、14年より短ければ賃貸の方がトータルコストを抑えられる、という試算結果です。
「賃貸は家賃を払い続けるだけ」「持ち家はローンを完済すれば得」という単純な比較では見落とされがちですが、持ち家には見えにくいコストと見えにくい資産の両方があります。頭金・諸費用という初期の持ち出しに加えて、管理費・修繕積立金・固定資産税という賃貸にはない継続コストがかかる一方で、住み続けた年数に応じて売却すればいくらか手元に戻ってくるという資産価値も同時に積み上がっていきます。この「実質コスト(総支払額から売却時の手取り額を差し引いたもの)」という考え方で賃貸の累計コストと突き合わせたのが、以下の試算です。
本試算は以下の条件で行いました(scripts/rent_vs_buy_simulation.py)。実際の損得は物件・地域・金利によって変動するため、あくまで目安としてご覧ください。
物件価格や家賃の水準は地域・物件タイプによって大きく異なるため、上記はあくまで「東京都内でファミリー向け住戸を検討する場合」を想定した一例です。ご自身の状況に近づけるには、物件価格・想定家賃をお住まいの地域の相場に置き換えて考えてください。
居住年数 | 賃貸の累計コスト | 持ち家の実質コスト | 持ち家−賃貸 |
|---|---|---|---|
5年 | 1,044万円 | 1,607万円 | +563万円 |
10年 | 2,125万円 | 2,462万円 | +337万円 |
15年 | 3,243万円 | 3,006万円 | △236万円 |
20年 | 4,437万円 | 4,016万円 | △421万円 |
25年 | 5,672万円 | 4,387万円 | △1,285万円 |
30年 | 6,990万円 | 5,179万円 | △1,811万円 |
35年 | 8,354万円 | 5,984万円 | △2,371万円 |
持ち家の「実質コスト」は、頭金・諸費用・ローン返済額・維持費の総支払額から、その時点で売却した場合の手取り額(売却額−ローン残高)を差し引いたものです。表のとおり、居住15年目で持ち家の実質コストが賃貸の累計コストを下回り(△は持ち家が得であることを示します)、以降その差は開いていきます。
この逆転が起きる理由は単純で、賃貸の支払いは全額が消費で終わるのに対し、持ち家のローン返済は一部が「元本の返済=自分の持分(エクイティ)の積み上げ」になるためです。返済開始直後は利息の比率が高く元本はあまり減りませんが、返済が進むほど元本部分の比率が増え、売却時に手元へ戻ってくる金額(資産価値からローン残高を差し引いた持分)が加速度的に大きくなります。新築プレミアムの消失や諸費用という「持ち家側のハンデ」を、何年かけて元本の積み上げが追い越すか——これが損益分岐年数の正体です。
家賃上昇率 | 損益分岐年数 |
|---|---|
横ばい(0%) | 15年 |
年1%上昇 | 14年 |
年2%上昇 | 12年 |
家賃が上昇するほど賃貸継続コストが膨らむため、損益分岐は早まります。都心部のように新規契約家賃の上昇ペースが速いエリアほど、持ち家が有利になるタイミングは早まる傾向にあります。
資産価値の想定 | 損益分岐年数 |
|---|---|
下振れ(想定指数の85%で売却) | 20年 |
想定どおり | 14年 |
上振れ・含み益あり(想定指数の115%で売却) | 5年 |
持ち家の損得は、売却時にいくらで売れるかという不確実な要素に最も敏感に反応します。地価が上昇傾向のエリアで購入できれば損益分岐は大きく早まる一方、資産価値が想定より下振れした場合は20年以上住まないと元が取れない計算になります。エリアごとの資産価値の傾向は築年数帯別の実勢価格データで確認できます。
なお、金利タイプ別(変動0.9%・変動1.2%・フラット35目安1.9%)に試算すると損益分岐は14〜22年の範囲で動きます。金利タイプそのものの選び方・総返済額の詳しい比較は変動金利vs固定金利2026|どっちが得か総返済額で比較で解説しています。
都心部と郊外では、この試算の前提そのものが変わってくる点にも注意してください。都心部は物件価格・家賃がともに高い一方、資産価値が下がりにくく上振れ(含み益)も期待しやすいため、表Cの「上振れ」に近づくほど損益分岐は早まります。反対に人口減少が続くエリアでは資産価値の下振れリスクが相対的に高く、表Cの「下振れ」に近づくほど損益分岐は遠のきます。エリアごとの資産価値の傾向は中古マンション購入完全ガイドで詳しく確認できます。
免責:本試算は一定の前提に基づく簡易モデルであり、個別の物件価格・金利・地域・市況によって結果は大きく変動します。特に資産価値は都心部・郊外で傾向が大きく異なるため、あくまで参考値としてご覧ください。

持ち家の最大の強みは、ローン完済後に住居費が大幅に減ることと、売却・相続によって資産を残せることです。一方で初期費用・金利上昇・維持費のリスクを抱えます。
メリット
デメリット

賃貸の強みは、初期費用の低さと住み替えの自由度です。短期間で住まいを変える可能性がある人ほど賃貸が有利になります。一方で、家賃を払い続けても資産が残らない点と、老後のリスクが弱点です。
メリット
デメリット
持ち家と賃貸のメリット・デメリットを並べると、結局は「損益分岐年数を超えて住み続けられる見込みがあるか」「その見込みが崩れたときのリスクをどこまで許容できるか」という2つの問いに集約されます。次章では、この2つの問いへの答えが世帯タイプによってどう変わるかを具体的に見ていきます。

損益分岐年数の考え方は同じでも、どちらのリスクをより重く見るかは世帯タイプによって変わります。ここでは代表的な4つのケースを整理します。
収入源が1人分のため、ローン審査上の借入可能額が世帯より少なくなりやすく、病気・失業時の返済継続力も1人分に限られます。前章の基本ケース(借入4,000万円)をそのまま組める世帯年収があるかどうかは、まず確認が必要です。一方で、住み替えの意思決定を自分だけで完結できるため、転勤や働き方の変化に応じて賃貸の柔軟性を活かしやすい面もあります。急な収入減少に備えた資金的な余裕をどこまで確保できるかが判断の軸になります。判断基準の詳細はおひとりさまのマイホーム購入|シングルで後悔しない判断基準で解説しています。
世帯年収が高くなりやすく、借入可能額に余裕が出るため、損益分岐年数(前章の基本ケースでは14年)に届く前の早い時期でも購入しやすい世帯です。ただし、離婚時の財産分与・ペアローンの残債処理という賃貸にはないリスクも抱えます。共働きが前提の返済計画は、どちらかの収入が減った場合に一気に苦しくなる点にも注意が必要です。詳しくはDINKS夫婦の住まい選び|後悔しない購入と老後の備え、共働き世帯特有のペアローン設計は共働き夫婦の住宅購入ガイド|ペアローンの選び方と育休リスク対策を参照してください。
収入面での審査ハードルに加え、子どもの成長に伴う教育費のピークと住居費の負担が重なるタイミングを見極める必要があります。損益分岐年数だけでなく、子どもが独立するまでの年数という別の時間軸も判断材料になります。ひとり親向けの支援制度・住宅ローン審査の実情も含めた判断基準はシングルマザーの住まい選び|賃貸と購入・支援制度の全知識で詳しく解説しています。
法律婚と異なり共有名義・相続の扱いが複雑になりやすく、関係解消時の持分整理も想定しておく必要があります。持ち家の実質コストは前章の試算どおりでも、関係解消時に想定より早いタイミングで売却せざるを得なくなると、損益分岐前で手放すことになりかねません。共有名義のリスクと対策は同棲・事実婚カップルの不動産購入ガイド|共有名義のリスクと対策を参照してください。

ここまでの試算・比較を踏まえ、実際の判断で確認すべき7つの基準をまとめました。
賃貸か持ち家かの選択に絶対の正解はありません。大切なのは、感覚ではなく「何年住むか」という具体的な軸で損得を確認したうえで、ライフスタイル・資金状況・住居への考え方を総合的に判断することです。
標準的な条件(物件価格5,000万円・家賃16万円/月)での独自試算では、居住14年を境に持ち家の方が実質コストで有利になります。ただし家賃上昇率・金利・売却時の資産価値によって12〜22年の範囲で変動するため、詳しくは本記事の独自試算セクションをご確認ください。ご自身の物件価格・家賃で試算し直したい場合は、前提条件を置き換えたうえで同じ考え方(総支払額から売却時の手取り額を引く)を当てはめてみてください。
基本ケースでは14年が損益分岐の目安です。家賃が上昇するエリアほど早く(年2%上昇なら12年)、資産価値が下振れするほど遅く(下振れ想定なら20年)なります。逆に資産価値が上振れして含み益が出るエリアでは、5年程度でも持ち家が有利になる場合があります。
住み続ける年数が損益分岐(目安14年)を超える見込みなら、その表現は数字の上でも裏付けられます。ただし14年未満で住み替える可能性が高い場合は、頭金・諸費用・売却コストという持ち家側の負担の方が重くなるため、一概には言えません。
住宅価格の高止まりや金利の緩やかな上昇が続いており、市場だけで買い時を判断するのは困難です。「賃貸を続けるか購入するか」ではなく「購入すると決めたうえでいつ動くか」という時間軸の判断は今買う vs 1年待つ|金利上昇局面の住宅購入タイミングを試算【2026】で試算しています。
ローン完済後は住居費が固定資産税・維持費のみに減るため、老後の家計負担は軽くなります。ただし老朽化による修繕費や、マンションでは修繕積立金の値上がりリスクもあるため、一概に「安心」とは言えません。完済までに住宅ローン控除や繰り上げ返済をどう活用するかも、老後の負担を左右します。
高齢であることを理由に入居審査で断られるケースが増えている点が最大のリスクです。収入証明や連帯保証人の確保が難しくなるほど、選べる物件の選択肢が狭まります。実際の対策は高齢者の約5割が入居を断られる時代|賃貸に住み続ける対策で解説しています。
収入が1人分になる分、借入可能額や返済継続力の面で世帯より慎重な計画が必要です。ただし住み替えの意思決定を自分だけで完結できる自由度は賃貸・持ち家どちらを選ぶ場合にも活かせます。シングル特有の判断基準はおひとりさまのマイホーム購入|シングルで後悔しない判断基準で詳しく解説しています。
住宅ローン控除は持ち家の実質負担を軽くする要素の一つですが、本記事の損益分岐試算では控除額を織り込んでいません(保守的な試算のため)。控除を考慮すると損益分岐はやや早まる方向に動きます。控除額の詳細は住宅ローン控除2026|いくら戻る?限度額早見表と申請手順をご覧ください。
賃貸か持ち家かの選択に絶対の正解はありません。本記事の試算はあくまで一つの前提に基づく目安であり、物件価格・家賃相場・金利はお住まいの地域や検討中の物件によって大きく変わります。ご自身の条件に置き換えて考えたうえで、判断に迷う場合はファイナンシャルプランナーや不動産会社への相談で具体化していきましょう。買うと決めたあとの「いつ買うか」は今買う vs 1年待つ|金利上昇局面の住宅購入タイミングを試算【2026】、子育て世帯のタイミング判断は子育て世代のマイホーム購入タイミング|後悔しない判断基準、住宅ローン控除の詳細は住宅ローン控除2026|いくら戻る?限度額早見表と申請手順もあわせてご参照ください。
最終更新日:2026-08-31