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同じ揺れで壊れた家と無事だった家を分けるのは、木造住宅では主に建てられた時期です。分かれ目は築年ではなく建築確認を受けた日で、1981年6月と2000年6月が大きな節目になります。
この記事でわかること
2026年8月18日、国土交通省は令和8年熊本地震における建築物の構造被害について、その原因を分析する委員会の第1回開催を発表しました。同じ地域で同じ揺れを受けながら、大きく壊れた建物とほとんど無事だった建物があります。その差はどこから生まれるのか。過去の分析結果をたどると、住まいを選ぶとき・守るときに使える具体的な判断材料が見えてきます。

国土交通省は2026年8月18日、令和8年熊本地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会の第1回を開催すると発表しました。地震の発生から3週間での始動です。
今回の地震は、気象庁によると2026年7月28日16時27分に熊本県熊本地方で発生し、マグニチュード7.1・最大震度7を観測しました。最大震度5弱以上の地震は初めの地震を含めて6回観測されており、地震活動は依然として活発な状態が続いています。8月18日時点でも3,000人以上が避難所での生活を続けています。
この種の委員会は、建築構造の専門家と設計・審査の実務者が集まり、被害を受けた建物を網羅的に調べて「何がその差を生んだのか」を特定する場です。2016年に発生した前回の熊本地震でも同じ枠組みの委員会が設けられ、その報告書がその後の耐震対策の土台になりました(国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書について」)。今回の分析結果も、今後の住宅選びの基準に影響する可能性があります。最新の発表は国土交通省の住宅関係報道発表資料で確認できます。

木造住宅の耐震性は、建物が建築確認を受けた時期によって大きく3つの世代に分かれます。大地震のたびに判明した弱点が、そのつど基準に反映されてきたためです。
新耐震基準とは、1981年6月に施行された建築基準法の耐震基準のことで、それ以前の基準は旧耐震基準と呼ばれます。最大の変更点は、地震の横揺れに抵抗する「耐力壁」の必要量を大幅に引き上げたことです。柱と梁だけの骨組みは上からの重さには耐えられますが、横から押される力にはほとんど抵抗できません。そこで筋かいや構造用合板を入れた壁を一定量確保するよう義務づけました。
2000年基準とは、2000年6月から適用された木造住宅の耐震規定で、新耐震基準に3つの要素を上乗せしたものです。1995年の阪神・淡路大震災で、壁の量が足りていても被害が出ることが分かったためです。
不動産取引の現場でも、1981年から2000年までに建てられた家は「壁の量は足りているが、バランスと接合部の規定がない世代」として区別されています。
2025年4月の建築基準法改正では、これまで審査が省略されていた小規模木造住宅の扱いが変わりました。2階建て以上の木造住宅と延床面積200平方メートル以上の平屋が新2号建築物に分類され、建築確認の際に構造関係の図書を提出することが義務づけられています。設計者任せになっていた部分に第三者の目が入るようになった点で、これも一つの分かれ目といえます。

2016年の熊本地震で行われた益城町中心部の悉皆調査(対象区域の建物をすべて調べる全数調査)では、木造建築物の倒壊・崩壊率が建築時期によってはっきり分かれました。旧耐震基準の倒壊・崩壊率は28.2%(国土交通省 委員会報告書)です。
建築時期 | 区分 | 倒壊・崩壊率 |
|---|---|---|
1981年5月以前 | 旧耐震基準 | 28.2% |
1981年6月〜2000年5月 | 新耐震基準 | 8.7% |
2000年6月以降 | 2000年基準 | 2.2% |
(出典:国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書。益城町中心部における日本建築学会の悉皆調査に基づく)
ここで注意したいのは、2000年基準でも倒壊がゼロではないことです。建築基準法の耐震基準は、震度7クラスの揺れに1度だけ耐えて命を守るための最低ラインであり、揺れたあとも同じ性能を保ち続けることまでは想定されていません。住宅の構造に詳しい専門家の多くが指摘するのが、1度目の揺れで受けたダメージが蓄積し、その後の地震で倒れるという流れです。実際、2016年の熊本地震では1度目の震度7より2度目の震度7で倒壊が多かったとされています。今回の地震でも最大震度5弱以上が6回観測されており、繰り返しの揺れへの備えは無視できません。

判定の基準は完成年や登記の年ではなく、建築確認を受けた日です。確認から完成までは数か月から1年ほどかかるため、2000年に完成した家でも確認が1999年なら旧来の規定で建てられている可能性があります。
図面がなくても、住宅購入に詳しい専門家が内見時の目安として挙げるチェックポイントがあります。
壁のバランスは建物の中央より外周が効くとされ、人が足を開いて踏ん張る方が倒れにくいのと同じ理屈だと説明されます。中古住宅を検討している方は、買ってはいけない中古住宅の見分け方|危険サイン12選もあわせてご覧ください。マンションの場合の考え方は茨城M5.5で震度5弱|旧耐震マンションの3大リスクと今すぐできる耐震チェックで解説しています。

この世代の家は「壁の量はあるが、配置バランスと接合金物の規定がない」中間層にあたります。費用の低い順に、できることを整理します。
新築や建て替えを考えている場合は、耐震等級が目安になります。等級1が建築基準法の最低基準、等級2がその1.25倍、等級3が1.5倍の強さです。実務では、30〜40坪の木造住宅で等級3にするための設計・工事費の上乗せは概ね100万円前後とされ、繰り返しの揺れを踏まえて等級3を標準にすべきだという声も専門家から出ています。等級の仕組みは住宅性能表示制度とは|10評価項目・等級をわかりやすく解説で詳しく解説しています。土地側のリスクについては熊本で震度7|地震に強い土地の見分け方と無料チェック法もご覧ください。
1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物が新耐震基準の対象です。完成年ではなく建築確認の日が基準になるため、1981年や1982年に完成した建物は、確認日をあらためて確かめておくと安心です。
新耐震基準は耐力壁の必要量を定めたもので、2000年基準はそこに壁の配置バランスの規定、柱頭・柱脚の接合金物の仕様、地盤に応じた基礎の仕様が加わったものです。壁の量が足りていても、配置が偏っていたり柱が抜けたりすると性能を発揮できないことが過去の震災で分かったためです。
まず建築確認済証・検査済証で確認日を調べます。書類がない場合は市区町村で建築計画概要書を閲覧できることがあります。購入前にホームインスペクション(住宅診断)や耐震診断を受け、必要な補強の内容と費用を把握しておくと判断しやすくなります。
木造住宅の一般的な耐震診断は数万円から10万円台が目安ですが、多くの自治体が補助制度を設けており、自己負担が無料または数千円で済む場合もあります。対象となる築年や上限額は自治体ごとに異なるため、居住地の建築担当窓口で確認してください。
被災後の住まいとお金の手当てについては熊本で震度7|被災したら住宅ローンはどうなる?で解説しています。大きな地震のあとは工事の依頼が集中し、診断や補強の着手までに時間がかかることがあります。まずは書類を探して自宅がどの世代かを確かめ、居住地の自治体の補助制度を調べるところから始めてください。建物の状態に不安がある場合は、建築士や耐震診断士など専門家に相談することをおすすめします。