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リフォーム費用が2026年に入って急上昇しています。中東情勢による原料不足が原因で、断熱材は約4割、塗料用シンナーは約7〜8割の値上げが実施され、受注停止や納期遅延も起きています。
この記事でわかること
「外壁塗装の見積もりが去年より高い」「給湯器の交換を頼んだら数か月待ちと言われた」。2026年に入ってから、こうした声がリフォームの現場で急増しています。値上げは4月から5月にかけて突然始まり、8月に入っても新しい値上げ情報の更新が続いています。何が起きているのか、そして工事を控えている人はどう動けばよいのかを整理します。

2026年に入り、住宅に使われる建材の値上げが品目を問わず一斉に実施されました。上げ幅は品目によって大きく異なり、塗料用のシンナー(塗料を薄める溶剤)は約70〜80%、断熱材のボード系製品は約40%という水準です。
主な品目の値上げ状況は次のとおりです。
品目 | 値上げ率の目安 | 適用時期 |
|---|---|---|
塗料用シンナー | 約70〜80% | 3月出荷分〜 |
断熱材(ボード系) | 約40% | 4月1日〜 |
断熱材(グラスウール) | 約15〜25% | メーカーにより差 |
ルーフィング(屋根の防水下地材) | 約40〜50% | 5月1日納品分〜 |
溶剤塗料・水性塗料 | 約30% | 順次 |
金属製の屋根・外壁材 | 約15〜18% | 6〜7月出荷分〜 |
雨樋 | 約20〜30% | 7月1日納入分〜 |
内装仕上材・壁紙・床材 | 約20% | 順次 |
水栓金具 | 平均約15% | 順次 |
※出典:テイガク「建材資材の値上げと受注停止の影響」(2026年8月5日更新)ほか各社公表情報をもとに整理(データ取得日:2026-08-17)。値上げ率はメーカー・製品により異なります。
さらに深刻なのは、値上げだけでなく供給そのものが止まっている資材があることです。2026年4月には、屋根用のアスファルトルーフィング、水性の下塗材、システムバスなどで新規受注の停止が相次ぎました。給湯器も塗装溶剤の不足と半導体の供給遅れが重なり、1〜2か月待ちが発生しているとされています。

これらの値上げは、業界で「ナフサショック」と呼ばれる原料不足が原因です。ウッドショックと似た現象に見えますが、影響が及ぶ範囲がまったく異なります。
ナフサとは、原油を精製する過程で得られる粗製ガソリンのことで、プラスチックや樹脂、塗料などをつくるための原料になる中間素材です。ガソリンとは別物で、住宅の断熱材・配管・塗料・床材・接着剤・窓周りの樹脂部品など、あらゆる建材の出発点になっています。
日本はこのナフサの輸入を中東に約74%依存しており、国内在庫は2〜3週間分程度とされています。原油を精製してもナフサとして取れるのは約10%程度にとどまるため、供給が止まると代替が効きにくいという構造的な弱さがあります。2026年2月末から中東情勢が緊迫し、ホルムズ海峡が事実上封鎖されたことで調達が滞り、化学メーカーが減産に踏み切った結果、建材メーカーの値上げが連鎖しました。
数年前のウッドショックは木材、つまり建物の骨組みに使う構造材の高騰が中心でした。そのため影響は新築や大規模なリフォームに偏り、内装中心の小規模なリフォームへの影響は限定的でした。
一方で今回は、断熱材・配管・塗料・床材・接着剤・樹脂部品といった住宅のあらゆる場所に使われる素材が同時に上がっています。木造・鉄骨・鉄筋コンクリートを問わず、新築だけでなくリフォームも直撃するのが今回の特徴です。
工事の現場で厄介なのは、値上げよりもむしろ「モノが届かない」ことです。ユニットバスは接着剤と人工大理石、システムキッチンは化粧シートと樹脂パーツ、給湯器は塗装溶剤と半導体というように、完成品はどれか1つの部材が欠けるだけで出荷が止まります。1点の欠品が工期全体を押し下げる構造になっています。

ここで大切なのは、報道される値上げ率はあくまで部材ごとの数字であり、工事費の総額がその割合で上がるわけではないという点です。「断熱材が4割高」と聞くと総額も4割上がるように感じますが、住宅は多数の部材の集合体です。
目安として、業界では次のような試算が示されています。断熱材を250枚使用する住宅で断熱材が40%値上がりした場合、断熱材だけで原価が約50万円増えるという計算です。ただしこれは施工会社が仕入れる際の原価であり、施主への転嫁幅は会社の判断によって変わります(出典:SALAつむぎ「リフォーム工事の遅れと値上がり対策」ほか業界解説/データ取得日:2026-08-17)。
これに配管・塗料・接着剤・内装材の値上げが加わるため、建物の総額では5%から1割程度の上振れが生じる可能性が指摘されています。リフォーム工事の現場でも、施主が確認すべきは部材の値上げ率ではなく「わが家の総額でいくら上がるのか」という点だと繰り返し指摘されています。個別の資材の数字に振り回されず、総額の変化を施工会社に確認することが判断の出発点になります。
なお、建築費の上昇は資材だけが理由ではありません。工事の人件費の目安として国が公表する公共工事設計労務単価は、令和8年3月適用分で全国全職種の加重平均が25,834円となり、14年連続で上昇しています(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」/データ取得日:2026-08-17)。建築費全体の動きは住宅着工3カ月連続増の真相|家の買い時はいつ?でも解説しています。

すべての工事を先送りするのも、慌てて前倒しするのも得策ではありません。判断の軸は「壊れたときに生活が止まるかどうか」です。
給湯器・配管・屋根の防水といった生活インフラに直結する設備は、待つほどリスクが高まります。故障してから交換を依頼すると、そのときには数か月の納期待ちが発生し、お湯が使えない・雨漏りが止められないという状態が長引く可能性があるためです。すでに耐用年数を超えている設備は、動いているうちに交換の相談を始めておくほうが安全といえます。
また、省エネリフォームの補助制度は予算の上限に達し次第終了します。値上がり局面では補助金の有無が総額に効いてくるため、早めの確認が有利です。制度の中身は最大125万円!省エネ補助金「みらいエコ住宅2026」が今アツいで詳しく紹介しています。
内装の張り替えや意匠面の変更など、生活に支障が出ない工事は時期を選べます。相見積もりを取りながら落ち着いて進めて問題ありません。
一方で注意したいのが、値上がりを吸収するために断熱等級(住宅の断熱性能を段階で示す指標)を下げるという判断です。住宅の断熱基準は2030年に向けて段階的に引き上げられる方向にあり、今の水準からグレードを落とすと、数年で仕様が見劣りする可能性があります。省エネ性能は光熱費にも将来の売却時の評価にも関わるため、削る優先順位は低くしておきたい部分です(あわせて省エネ義務化で「ZEHでない家」は損?2026年の新常識もご覧ください)。

見積もりは「一式いくら」ではなく、資材ごとの単価がわかる明細で受け取ってください。これが値上がり局面で施主を守る、最も実務的な自衛策です。
理由は検証できるようになるからです。資材ごとの単価、可能であれば商品名や品番まで記載してもらえば、後から「資材が上がったので追加費用を」と言われたときに、メーカーが公表している値上げ内容と突き合わせて妥当かどうかを確認できます。逆にどんぶり勘定の見積もりでは、追加費用を提示されても検証のしようがありません。明細の提示に応じない業者は、この局面では慎重に見たほうがよいでしょう。
すでに契約済みの場合は、契約書に工事中の価格変更に関する取り決めがあるかを確認しておきます。そのうえで、今回の影響で総額や仕様に変更が生じるのかを施工会社に確認する、という順番です。焦って駆け込みで契約するのも、進んでいた話を突然止めるのも避けたい対応とされています。まず現状を把握し、対応を考えるのはその後です。
もう1つ知っておきたいのが、施工会社側の経営環境です。建設業の倒産は2025年に年間2,021件と4年連続で増加し、12年ぶりに2,000件を超えました。コスト上昇分を価格に反映できている割合(価格転嫁率)は約39.6%にとどまるとされ、増えたコストの6割前後を施工会社が自ら吸収している計算になります。
そのため不動産・建築の現場では、値上げを正直に説明できる会社のほうが経営としては健全という見方が広がっています。据え置きを掲げる会社は差額を自社の利益から出している可能性があり、工事の途中で会社が立ち行かなくなれば、施主は工事中断という最も重い被害を受けることになります。会社の規模の大きさが安全を保証するわけではなく、適正な利益を確保できているかという体質で見ることが大切です。
資材の価格は今後も変動する可能性があり、いつ落ち着くかを正確に見通すことはできません。だからこそ、値上げのニュースそのものより「自分の工事にいくら効くのか」を早めに把握しておくことが、余計な出費と生活の停滞を避ける近道になります。工事の優先順位や補助金の使い方に迷う場合は、複数の施工会社から明細付きの見積もりを取り、比較したうえで判断することをおすすめします。