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老後資金の確保には、家を売って住み替える「ダウンサイジング」のほかに、住み続けながら資金を得られる「リバースモーゲージ」「リースバック」という選択肢もあります。どれが向いているかは資産状況や住まいへの考え方によって変わります。持ち家という資産をどう活かすかは、老後の暮らし方そのものを左右する大きな決断です。
この記事でわかること
「子どもが独立して家が広すぎる」「定年後の維持費が心配」「老後の生活資金を確保したい」——50・60代になると住まいに対する考え方は大きく変わります。老後を見据えた住み替えは、快適な老後生活を送るための重要な選択肢のひとつですが、「家を売る」以外にも「住み続けながら資金を得る」方法があることは意外と知られていません。本記事では、3つの方法を横並びで比較し、あなたに合った選択肢を見つける手助けをします。「資産をどれだけ子に残したいか」「住み慣れた家への思い入れがどれだけ強いか」によって最適な選択肢は変わるため、正解が1つに決まる話ではありません。まずは選択肢の全体像を把握することから始めましょう。

子育てが終わり、夫婦2人あるいは1人で暮らすようになると、それまで必要だった部屋数や広さが不要になります。ダウンサイジングとは、広い住まい(特に戸建て)から、より小さくコンパクトな住まいに住み替えることです。一般社団法人不動産流通経営協会「シニアの住宅に関する実態調査」によると、住み替えを検討しているシニア層のうち、ダウンサイジングを希望する割合は80%を超えているとされています(出典:一般社団法人不動産流通経営協会「シニアの住宅に関する実態調査」/2026年8月確認)。同協会の調査では、住み替え前が持ち家一戸建てだった人のうち、直近では戸建てへの再住み替えが約4割に減り、代わって分譲マンションや賃貸住宅への住み替えが増加している傾向も示されています。
住み替え前が戸建てだった人の住み替え先 | 11年以上前 | 直近10年 |
|---|---|---|
戸建てへの再住み替え | 約91.0% | 約39.2% |
分譲マンションへの住み替え | 約4.5% | 約35.4% |
賃貸住宅等への住み替え | 約4.5% | 約25.4% |
戸建てから戸建てへ住み替える人が大きく減り、マンションや賃貸への住み替えが増えていることから、「広い戸建てを手放してコンパクトな住まいに移る」というダウンサイジングの流れが、この10年で明確なトレンドになっていることがわかります。背景には、単身・夫婦のみ世帯の増加や、共働き世帯の増加によるマンション需要の高まりなど、複数の社会的要因があると考えられます。子育てを終えた世帯にとって、駅から遠く車移動が前提の郊外の広い戸建てよりも、駅近で買い物や通院がしやすいマンションの利便性が相対的に高まっている、という見方もできます。

ダウンサイジングの代表的なメリットは以下の5つです。
メリット | 内容 |
|---|---|
生活コストの削減 | 固定資産税・修繕費・光熱費など持ち家特有のコストが減少する |
老後資金の確保 | 広い戸建てを売却し、売却益を老後の生活資金や医療・介護費用の備えに充てられる |
生活利便性の向上 | 駅近やスーパー・病院の近くに住み替えることで、車なしでも生活が完結する環境を整えられる |
バリアフリー対応 | 新しいコンパクトマンションへの住み替えで、段差のない生活環境を実現できる |
メンテナンス負担の軽減 | 広い家の清掃・庭の管理・外壁塗装などの手間から解放される |
一方で、ダウンサイジングには見落とされがちなデメリットもあります。
メリットばかりに目が向きがちですが、デメリットも踏まえたうえで検討することが大切です。特に「収納・部屋数の減少」は、実際に新居で暮らし始めてから気づくケースが多いため、事前に家財の整理計画を立てておくことをおすすめします。子ども世帯に譲る・売却する・レンタル収納を利用するなど、選択肢は複数あります。また、住み慣れた地域を離れる場合は、新しい病院やスーパー、交友関係などをゼロから作り直す負担も考慮しておく必要があります。可能であれば、同じ地域内でのダウンサイジングを検討することで、この負担を軽減できます。

これまで見てきたダウンサイジングは「家を売って住み替える」方法でしたが、老後資金を確保する方法はそれだけではありません。「住み続けながら資金を得る」リバースモーゲージ・リースバックという選択肢もあります。当サイト独自試算として、評価額3,000万円の持ち家(住宅ローン完済済み)を例に、3つの方法を比較しました。
自宅を売却し、より小さな住まいに住み替える方法です。売却手取り額(諸費用5%を差し引き)約2,850万円から、新居(例:1,500万円のコンパクトマンション+諸費用)の購入費用約1,575万円を差し引くと、老後資金として約1,275万円が手元に残る計算になります。新居という資産も保有できるため、相続時には新居+残った現金=約2,775万円相当が残ります。新居の資産価値は市場動向によって変動するため、この金額はあくまで目安である点にご留意ください。
「リバース(逆)モーゲージ(抵当)」という名前のとおり、通常の住宅ローンとは逆に、自宅を担保にお金を借りながら、その家に住み続けられる仕組みです。自宅を担保に金融機関から融資を受け、住み続けながら資金を得る方法です。融資限度額は評価額の50〜60%程度が一般的とされ、本試算では55%(約1,650万円)とします。毎月は利息のみを返済し、元金は契約者の死亡時等に自宅を売却して一括返済する仕組みです。金利は3〜4%台が目安とされ、本試算では3.5%とすると、10年間で累計利息は約578万円、20年間では約1,155万円に達します(出典:知るぽると(金融広報中央委員会)「老後を豊かに過ごすために-リバースモーゲージという選択肢-」/2026年8月確認)。金利は変動するため、利用時期や金利動向によって総利息が大きく変わる可能性がある点に注意が必要です(日本経済新聞「リバースモーゲージの『ワナ』融資額や利用時期で利息差1000万円以上」/2026年8月確認)。
相続人への負担については、契約が「リコース型」か「ノンリコース型」かで大きく異なります。これは住宅ローンにおける保証料や団信の考え方とはやや異なる、リバースモーゲージ特有の仕組みです。ノンリコース型であれば、自宅の売却額が残債に満たなくても相続人に不足分の請求はされませんが、その分金利がやや高め・融資可能額が少なめになる傾向があるとされています。数十年前と比べて商品数・利用者ともに増加しているとされる制度ですが、契約前に必ずどちらの型かを確認しましょう。また、多くの金融機関では契約者が55歳以上(配偶者がいる場合は50歳以上とする金融機関もある)であることを条件としており、若すぎる年齢では利用できない点にも注意が必要です。
自宅を不動産会社に売却し、その後は家賃を払いながら同じ家に住み続ける方法です。売却価格は市場価格の70〜80%程度になる傾向があり、本試算では75%(約2,250万円)とします。引っ越し不要でまとまった資金をすぐに得られますが、自宅の所有権は失うため、相続時に自宅という資産は残りません。毎月の家賃支払いも発生し続けます。将来的に「やはり買い戻したい」と考えた場合、再購入オプションが付いた契約であれば買い戻せる可能性もありますが、その場合の価格は売却時より高くなるのが一般的とされているため、契約内容を事前によく確認しましょう。
方法 | 手取り額の目安 | 住み続けられるか | 相続時に残る資産 |
|---|---|---|---|
1. ダウンサイジング | 約1,275万円(新居購入後) | 新居に住み替え | 新居+現金で約2,775万円 |
2. リバースモーゲージ | 約1,650万円(借入枠) | そのまま自宅に住める | 元金返済後で約1,350万円(概算) |
3. リースバック | 約2,250万円 | そのまま自宅に住める(家賃発生) | 0円(自宅分) |
【当サイト独自試算】前提:評価額3,000万円の持ち家(住宅ローン完済済み)。リバースモーゲージは掛け目55%・金利3.5%(変動)、リースバックは市場価格の75%として計算。実際の条件は金融機関・不動産会社・物件の評価により異なります。データ取得日:2026年8月。
「住み慣れた家を離れたくない」ならリバースモーゲージかリースバック、「資産をできるだけ子に残したい」ならダウンサイジングか、金利の低いうちのリバースモーゲージが選択肢になります。断定はできないため、ファイナンシャルプランナーや金融機関への相談も検討してください。例えば、子どもがいない、あるいは資産を残すことにこだわらない場合は、まとまった資金をすぐに得られるリースバックが合理的な選択になることもあります。逆に、複数の資産を子や孫に残したいと考えている場合は、ダウンサイジングで新居という資産を残す、あるいは金利が低いうちにリバースモーゲージを利用して元金の一部を残すという考え方もできます。いずれの方法も一度決めたら簡単にはやり直せない決断であるため、契約前に複数の金融機関・不動産会社から見積もりを取り、家族を交えて十分に検討することをおすすめします。

「老後の住み替えは60代より50代の方が有利」とよく言われますが、具体的にどれだけの差になるのでしょうか。ダウンサイジングによる年間維持費削減額を20万円程度と見積もりました(固定資産税は評価額に比例するため、より小さく築年数の浅い住まいに移ることで軽減されやすく、戸建てで発生しやすい大規模修繕の頻度も下がる傾向があります。出典:SUUMO「戸建ての維持費はいくらかかる?」/2026年8月確認)。55歳・65歳・75歳で住み替えを実行した場合に、仮に85歳まで同じ住まいに住み続けたとして累計の削減効果を試算しました。
住み替え年齢 | 住み続ける期間(85歳まで) | 累計削減額 |
|---|---|---|
55歳 | 30年 | 約600万円 |
65歳 | 20年 | 約400万円 |
75歳 | 10年 | 約200万円 |
【当サイト独自試算】前提:年間維持費削減額20万円・到達年齢85歳まで住み続けた場合の単純計算。実際の寿命・住み続ける期間は個人差があり、本試算はあくまで一つの目安です。データ取得日:2026年8月。早く動くほど累計の削減効果は大きくなり、55歳での住み替えは75歳での住み替えに比べて3倍の削減効果が見込める、という試算結果になりました。これに加えて、住宅ローンの新規借入や住宅ローン控除の活用のしやすさも50代の方が有利に働きやすいというメリットもあります。ただし、この試算はあくまで維持費削減という金銭的な側面のみを比較したものであり、「今の家にまだ愛着がある」「引っ越しの負担を考えると今は動きたくない」といった心理的な要素は数字に表れません。金銭面だけでなく、総合的に判断することが大切です。

最も一般的なダウンサイジング先です。50〜60㎡程度の2LDKや3LDKで、駅から近く生活利便性が高いエリアを選ぶことで、高齢になっても快適に生活できる環境を整えられます。マンションは共用部の管理が管理組合に委ねられるため、戸建てのように自分で外壁や屋根のメンテナンスを手配する手間がかからない点も、高齢期には大きな利点です。同じ予算でマンションと戸建てにどれだけ広さの違いが出るかはマンションか一戸建てか|実取引データで見る価格・広さの違いと選び方で解説しています。
持ち家を売却して賃貸に切り替える選択肢です。固定費が確定し、将来の住み替え(介護施設への転居など)がしやすいメリットがある一方、賃貸は所有に伴う固定資産税・修繕義務がない一方、契約更新や高齢になると賃貸審査が通りにくくなるリスクも考慮が必要です(詳しくは高齢者の約5割が入居を断られる時代|賃貸に住み続ける対策を参照)。持ち家か賃貸かの生涯コスト比較は賃貸vs持ち家はどちらがお得?生涯コスト比較と2026年の答えもご参照ください。
介護が必要になってからの選択肢としては、サービス付き高齢者向け住宅や介護施設への入居もあります。入居金・月額利用料の水準や施設の種類の詳細は親の介護が始まったら家はどうする?バリアフリーリフォームと住み替えの選択肢で詳しく解説しています。本記事は、まだ介護が必要になっていない、元気なうちの自主的な住み替えを主な対象としています(詳しくはH2-7)。
選択肢 | 所有形態 | 費用の傾向 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
コンパクトマンション | 購入(所有) | 初期費用は高め・維持費は戸建てより抑えやすい | 資産として保有し続けたい人 |
賃貸マンション | 賃借 | 初期費用は低め・固定費が確定しやすい | 将来また住み替える可能性がある人 |
サービス付き高齢者向け住宅・施設 | 入居契約 | 入居金・月額利用料が発生 | 介護・見守りサービスを必要とする人 |

老後の住み替えは「60代より50代の方が有利」と言われています。その理由は以下の通りです。
前述の独自試算(表B)が示すとおり、維持費削減の効果も早く動くほど大きくなります。「いつかは住み替えよう」と先延ばしにするより、子どもが独立した直後の50代中頃から準備を始めることを検討してみましょう。例えば、子どもが大学進学や就職で家を出るタイミングは、部屋数が余り始める最初のきっかけになりやすく、住み替えを具体的に検討し始める良い機会だといえます。なお、住み替え先で新たに住宅ローンを組む場合の完済時年齢の考え方は住宅ローンはいくら借りられる?年収別の借入額と返せる額を参照してください。

ここまで、老後資金の確保方法と住み替えのタイミングについて見てきましたが、最後にもう1つ大切な視点を確認しておきましょう。本記事で扱う住み替えは、介護が必要になる前の、元気なうちの自主的な判断を前提としています。介護が既に必要になっている、あるいは親の介護をきっかけに住まいを検討している場合は、親の介護が始まったら家はどうする?バリアフリーリフォームと住み替えの選択肢を参照してください。
元気なうちに動くことには2つの大きなメリットがあります。1つは、判断力・体力が十分なうちに、自分自身の意思で住まいを選べること。介護が必要になってから急に住み替えを迫られると、十分な比較検討ができないまま決断せざるを得ないケースが少なくありません。もう1つは、前述の独自試算(表B)が示すとおり、早く動くほど維持費削減の累計効果が大きくなることです。介護が必要になってからでは、本人の判断力が低下していたり、緊急性が高く十分な比較検討の時間が取れなかったりするケースも少なくありません。「まだ元気だから」と先延ばしにせず、判断できるうちに情報収集を始めておくことが、将来の自分と家族の負担を軽くすることにつながります。

老後の住み替えは、若い頃の住み替えとは異なり、やり直しがきかない場合も多い決断です。よくある失敗パターンを事前に知っておくことで、後悔を減らすことができます。
いずれの失敗も、「早めに情報収集を始め、複数の選択肢を比較したうえで、家族と相談しながら決める」ことである程度防ぐことができます。特にリバースモーゲージやリースバックのような専門的な金融商品は、契約後に「こんなはずではなかった」と気づいても取り消しが難しいため、契約前の情報収集にかける時間を惜しまないようにしましょう。
明確な決まりはありませんが、子どもが独立するタイミングや、住宅ローンの新規借入・控除の活用がしやすい50代中頃からの検討をおすすめします(H2-6参照)。当サイト独自試算(表B)では、55歳で住み替えた場合の累計維持費削減額は、75歳で住み替えた場合の3倍に達するという結果になりました。
金利が変動制のため、将来の総利息が想定より膨らむ可能性があること、契約がリコース型の場合は自宅の評価額が下落すると相続人に不足分の返済義務が生じうることが挙げられます(H2-3参照)。また、対象となる物件や地域が金融機関によって限定される場合がある点、配偶者の同意が必要になる場合がある点にも注意してください。
リースバックは自宅を売却して所有権を手放し、家賃を払って住み続ける方法です。リバースモーゲージは自宅を担保に借入をする方法で、所有権は保持したまま住み続けられます。相続時に自宅という資産が残るかどうかが大きな違いです(H2-3参照)。一般的に、まとまった資金をより多く得やすいのはリースバック、毎月の負担を抑えながら自宅に住み続けやすいのはリバースモーゲージ、という傾向があります。
完済時年齢の基準(一般的に80歳未満)を満たせば可能ですが、年齢が上がるほど審査は厳しくなる傾向があります。年金収入のみの場合は審査基準がさらに厳しくなることが一般的です。詳しくは住宅ローン審査に通る条件と落ちた場合の対処法を参照してください。
介護のためのバリアフリー化が主目的であれば、住み替えずにリフォームで対応する方法もあります。詳しくは親の介護が始まったら家はどうする?を参照してください。
長年住んだマイホームを売却する際は、3,000万円特別控除(居住用財産の特例)が適用できる場合があります。詳細な要件・計算方法は不動産売却の譲渡所得税と3,000万円控除|計算・申告を完全解説を参照してください。
資金計画を確実にしたい老後の住み替えでは、一般的に「売り先行」が推奨される傾向がありますが、詳細な比較・独自試算は住み替え完全ガイド|売り先行・買い先行と費用・税金および住み替えの税金・特例と住み替えローン完全ガイドで詳しく解説しています。
資産をできるだけ残したい場合は、ダウンサイジング(新居という資産が残る)や、金利の低いうちのリバースモーゲージ(元金返済後も資産の一部が残る)が選択肢になります(H2-3の表参照)。リースバックは自宅という資産が残らない点に注意してください。
収納・部屋数を実際の生活に合わせて事前にシミュレーションすること、複数の不動産会社から査定を受けて売却価格の相場を把握すること、家族と方針を共有しておくことが挙げられます(H2-8参照)。
老後資金の確保方法は、家を売るダウンサイジングだけでなく、住み続けながら資金を得られるリバースモーゲージ・リースバックという選択肢もあります。どれが正解ということはなく、資産をどう残したいか、住み慣れた家への思い入れがどれだけ強いかによって、最適な選択は人それぞれです。本記事の独自試算を参考に、自分や家族にとって納得のいく選択肢を検討してみてください。老後の住み替えは早めに情報収集を始めることが大切です。まずは不動産会社への無料相談や、ファイナンシャルプランナーへの相談から始めてみましょう。複数の選択肢を比較し、家族とも話し合いながら、自分たちに合った答えを見つけてください。
最終更新日:2026-08-29