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いわゆる「事故物件」(心理的瑕疵物件)を売買・賃貸するとき、売主や貸主には一定の告知義務があります。自然死は原則として告知不要ですが、他殺・自死・火災による死などは告げる必要があります。まずはこの線引きを押さえておきましょう。
この記事でわかること
お盆や怪談特集などで心霊・怖い話が話題になる夏は、「事故物件」という言葉の検索が季節的に増えます。気になる物件が相場よりかなり安いと、「もしかして事故物件では?」と不安になる方も多いはずです。ここでは、国土交通省のガイドラインをもとに、告知義務の範囲と見分け方を実用目線で整理します。

事故物件とは、過去に人の死などがあり、住むことに心理的な抵抗を感じさせる事情がある物件のことです。専門的には「心理的瑕疵(かし)」と呼ばれます。物理的な欠陥がなくても、買主や借主が知れば契約をためらうような事情が該当します。
心理的瑕疵とは、物件そのものに物理的な問題はなくても、過去の出来事によって住み手が嫌悪感や不安を抱く事情を指します。代表例が他殺・自死・火災による死などです。加えて、近隣とのトラブルや、暴力事件・反社会的勢力の拠点だった過去なども、買主や借主が避けたいと考える事情として心理的瑕疵に含まれる場合があります。つまり「事故物件」は心理的瑕疵の一部であり、死亡事案だけに限られない点は押さえておきたいところです。
夏は怪談番組や心霊特集、お盆の帰省シーズンが重なり、「事故物件」というキーワードへの関心が高まりやすい時期です。不動産取引の現場でも、家賃や価格が相場より大きく安い物件を見つけた人から「訳あり物件では」という相談が寄せられやすくなります。話題性で検索する人が多い一方、実際に住まい探しをしている人にとっては、告知義務のルールを正しく知っておくことが安心につながります。

告知義務の有無は、死の種類と取引の形態(賃貸か売買か)で変わります。判断の拠り所になるのが、国土交通省が2021年(令和3年)10月に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」です(出典:国土交通省「人の死の告知に関するガイドライン」)。
ガイドラインでは、対象の不動産で起きた自然死や、日常生活の中での不慮の死(自宅内での転倒事故、入浴中の事故、誤嚥など)については、原則として告知義務がないとされています。高齢化が進むなかで自宅で亡くなること自体は一般的に起こり得るため、これらを一律に告知対象とはしていません。ただし、こうした死であっても、長期間放置されて特殊清掃(遺体の痕跡を除去する専門的な清掃)が必要になった場合は、告知が必要と整理されています。
一方で、他殺・自死・火災による死など、いわゆる事件・事故性のある死は告知が必要です。また、前述のとおり自然死・不慮の死でも特殊清掃が行われた場合は告知対象になります。買主や借主から「過去に人が亡くなったことはないか」と質問された場合は、期間や死の種類にかかわらず、把握している事実は告げる必要があるとされています。
賃貸では、告知が必要な死が発生しても、発覚からおおむね3年を経過すれば原則として告げなくてよいとされています。一方、売買にはこうした期間の定めがありません。つまり売買では、時間の経過だけを理由に告知不要とする扱いは想定されておらず、より慎重な判断が求められます。ただし、事件性や社会的な影響が大きい事案では、3年を過ぎても告知が必要になることがあります。これらはあくまでトラブル防止の指針であり、最終的には個別の事情に応じて判断される点にも注意が必要です。

気になる物件が事故物件かどうかは、いくつかの手がかりから推測できます。不動産のプロが注意点として挙げるのは、「価格や家賃の安さ」と「募集図面の記載」です。
実務上よく見られるのは、周辺の相場に対して家賃が3分の1から4分の1ほどと極端に安いケースです。もちろん、駅から遠い・築年数が古いといった別の理由で安いこともありますが、立地や築年数のわりに突出して安い場合は理由を確認したいところです。募集図面に「告知事項あり」と書かれている場合は、心理的瑕疵などの事情がある可能性が高いため、必ず内容を確認しましょう。事故物件の情報を集めた民間サイトや、周辺住民の評判が手がかりになることもあります。
不動産取引の現場では、告知の線引きが難しいケースも少なくありません。実務では、敷地内で起きた事案か、隣接する道路で起きた事案かによって業者の判断が分かれることもあります。気になる点があれば、内見時や契約前に「告知事項はありますか」「過去に人が亡くなったことはありますか」と、不動産会社の宅地建物取引士に直接確認するのが確実です。以前は、いったん誰かが短期間入居すれば告知しなくてよい、といった扱いが一部で行われていましたが、ガイドラインで期間が明確化された現在は、そうした対応は通りにくくなっています。告知義務については、水害物件の告知義務と見抜き方もあわせて参考にしてください。
事故物件かどうかの判断や告知の範囲は個別の事情によって変わります。気になる物件がある場合は、契約前に不動産会社の宅地建物取引士へ確認し、納得したうえで判断することをおすすめします。