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断熱性能の高いマンションへ住み替えた居住者を追跡した共同研究で、高血圧の人や60歳以上の人に血圧の低下が確認され、睡眠の質も改善したと報告されました。住まいの断熱は光熱費だけの問題ではなくなっています。
この記事でわかること
2026年8月20日、大京・穴吹工務店がイズミコンサルティングおよび近畿大学・大阪大学と進めてきた産学共同研究の成果が公表されました。断熱性能の高い分譲マンションに住み替えた人の室温・血圧・脈拍を実測した調査で、血圧に関する成果は日本高血圧学会の学術誌に掲載されています。住まい選びに「健康」という判断軸が加わりつつある今、その中身を確認しておきましょう。

この研究は、ZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)仕様の新築分譲マンションを契約した185名(約130世帯)を対象にしたものです。ZEH-Mとは、断熱性能を高めたうえで省エネ設備と創エネ設備を組み合わせ、エネルギー収支の削減を目指すマンションを指します。
調査では、入居前に住んでいた従来型の住宅と、入居後のZEH-Mのそれぞれで、冬季に3週間ずつ室温・血圧・脈拍を測定しました。あわせて住環境の快適性や健康状態に関するアンケートも実施しています。同じ人が「前の家」と「新しい家」で比較される設計になっているため、住まいの性能差が結果に表れやすい調査です。
研究成果は2026年6月に開催された日本抗加齢医学会総会で発表され、血圧に関する内容は日本高血圧学会の学術誌『Hypertension Research』2026年7月号に掲載されました。住宅事業者の自社アンケートではなく、大学との共同研究として査読を経た形で公表されている点が、この発表の重みです。

報告された変化は次の3点です。いずれも「住み替えによって室温環境が改善したこと」との関連が示されています。
項目 | 報告された内容 |
|---|---|
血圧 | 高血圧群・高血圧治療群・60歳以上で降圧が確認された(全体では1年を通じた変化はなし) |
睡眠 | 睡眠の質が改善し、睡眠障害の疑いがある人の数が減少 |
症状 | 目のかゆみ・アレルギー性鼻炎などで「症状なし」と回答した割合が増加 |
血圧の低下が確認されたのは、高血圧の人・高血圧の治療を受けている人・60歳以上の人でした。逆に、対象者全体では1年を通じた明確な変化は見られていません。つまりもともと血圧が高めの人ほど、住まいの温熱環境の改善による恩恵を受けやすいと読み取れます。親世代との同居や実家の住み替えを考えている人にとっては見逃せない結果です。
睡眠については、質の改善に加えて睡眠障害の疑いがある人の数が減りました。寝室の寒さが和らいだことと関連しているとされています。また、目のかゆみやアレルギー性鼻炎で「症状なし」と回答する割合が増えました。断熱性能が上がると室内の温度差が小さくなり、結露やカビの発生も抑えられるため、居住環境全体が改善したと考えられます。

室温と健康の関係は、この研究だけの話ではありません。WHO(世界保健機関)は2018年の「住宅と健康に関するガイドライン」で、寒冷期の室内温度を最低18℃以上に保つよう強く勧告しています。高齢者や子ども、慢性疾患のある人にはさらに高い温度が望ましいとされています。
国土交通省の「スマートウェルネス住宅等推進調査」によると、日本の住宅の冬の居間の平均室温は16.7℃、脱衣所は12.6℃で、WHOが勧告する18℃を下回っています。この調査は断熱改修を予定する全国約1,800軒・居住者約3,600人を対象に、改修前後の血圧や身体活動量への影響を検証した大規模なものです。
場所・基準 | 冬の室温 |
|---|---|
日本の住宅の居間(平均) | 16.7℃ |
日本の住宅の脱衣所(平均) | 12.6℃ |
WHOの勧告(寒冷期の室内) | 18℃以上 |
出典:国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告」およびWHO「住宅と健康に関するガイドライン」(2018年)をもとに作成
同調査では、起床時の居間の平均室温が冬18℃以上に保たれている住宅では、最高血圧・最低血圧ともに季節による変動が小さいことも報告されています。
住宅の温熱環境を研究する専門家からは、血圧に効くのは「暖房した部屋が暖かいこと」ではなく家全体の温度差が小さいことだと繰り返し指摘されています。暖かい居間から寒い廊下やトイレ、脱衣所へ移動するたびに血管が収縮と拡張を繰り返し、それが血管に負担をかけるためです。居間16.7℃に対して脱衣所12.6℃という4℃の差は、まさにその負担が生じる状態を示しています。
不動産の現場でも「寒い家は行動範囲が縮む」と言われます。冬に暖房の効いた部屋以外へ行きたくなくなるため、床面積は広くても実際に使える空間が狭くなるという指摘です。夏の暑さ側の対策は2026年も酷暑日到来|命と光熱費を守る断熱住宅でも解説しています。

断熱性能はカタログの雰囲気ではなく、公的な指標で確認できます。物件を比較する際は次の3つを見てください。
省エネ性能が住宅ローン控除や補助金の条件にも影響する点は省エネ義務化で「ZEHでない家」は損?2026年の新常識で詳しく解説しています。

新築や高性能物件に住み替えなくても、温熱環境は改善できます。費用対効果が高いのは、熱の出入りが最も大きい窓の対策です。
断熱改修を検討する場合は、資材価格の動向と補助金を必ず確認してください。断熱材4割高|リフォーム費が急上昇中のとおり工事費は上昇傾向にある一方、最大125万円!省エネ補助金「みらいエコ住宅2026」が今アツいのような支援制度も用意されています。
今回の共同研究では、高血圧の人や60歳以上の人で血圧の低下、睡眠の質の改善、アレルギー症状の軽減が確認されました。ただし対象者全体で一律に効果が出たわけではなく、あくまで住環境と健康指標の関連が報告された段階です。持病がある場合は医師にも相談してください。
省エネ性能ラベルに記載される断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級が基本です。加えてZEH-Mやその水準を満たす表記があるか、窓のサッシとガラスの仕様(樹脂サッシ・複層ガラスなど)を確認すると精度が上がります。
WHOは寒冷期の室内を最低18℃以上に保つよう勧告しています。日本の住宅の居間の平均は16.7℃、脱衣所は12.6℃と報告されており、居間だけでなく廊下や脱衣所の温度差を小さくすることが重要です。
できます。断熱シートや厚手のカーテン、隙間テープなど原状回復可能な方法で窓際の冷気は抑えられます。内窓の設置は貸主の許可が必要ですが、光熱費と快適性の両面で効果が期待できるため相談する価値はあります。
住まいの断熱は、光熱費の節約という視点だけで語られてきましたが、健康という長期的な資産価値にも関わることが研究で裏づけられつつあります。物件を比較する際は価格と立地だけでなく、性能の欄にも必ず目を通してください。気になる物件があれば、販売資料の省エネ性能ラベルを取り寄せて比べるところから始めましょう。