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この記事でわかること
共有名義の不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。これは民法で定められたルールであり、たとえ持分が半分以上あっても、ひとりの判断だけで全体を売ることはできません。
「離婚した元配偶者が同意してくれない」「相続で兄弟と共有名義になったが話がまとまらない」という状況は、不動産取引の現場では日常的に見られます。専門家への相談件数も年々増加しており、離婚件数の高止まり(2024年も18万件超)と相続件数の増加が背景にあります。
この記事では、共有名義の不動産売却の基本から、共有者が同意しない場合の具体的な解決策、離婚・相続別の注意点、そして税金と費用のシミュレーションまで、ケース別に分かりやすく解説します。

共有名義の不動産とは、1つの不動産を複数人が「持分(もちぶん)」という形で分割して所有している状態のことです。まずは基本的な仕組みと、なぜ全員同意が必要なのかを理解しましょう。
共有名義(きょうゆうめいぎ)とは、民法第249条に規定される「共有」の状態を指します。ひとつの不動産に対して、AさんとBさんがそれぞれ「1/2ずつの持分(もちぶん)」を持っている、というのが典型的なイメージです。
持分は必ずしも均等である必要はなく、Aさんが2/3、Bさんが1/3という形でも構いません。登記簿(不動産の権利を記録した公式書類)には所有者全員の名前と持分割合が記録されています。登記簿謄本を取得すれば、誰がどれだけの持分を持っているかを確認できます。
共有名義の状態では、各共有者は自分の持分の範囲内で権利を持っていますが、不動産全体の管理・利用・処分については共有者間で合意する必要があります。共有物の「使用」は各共有者が持分に応じて行えますが、「変更(売却など)」には全員の合意が必要という非常に重要な違いがあります。
共有名義になるケースは主に以下の3パターンです。どのパターンに当てはまるかによって、売却の難易度や対処法が変わります。
不動産取引の現場では、「相続で共有名義にした実家がなかなか売れない」という相談が特に多く見受けられます。「とりあえず共有に」という選択が後々の大きな壁になるため、専門家への早期相談が重要です。
民法第251条により、共有物を変更・売却するには共有者全員の同意が必要です。不動産の売却は「処分(変更)」にあたるため、持分割合に関わらず、全員の意思表示が法律上求められます。
なお、共有不動産の「管理」(賃貸借契約など)は過半数の持分を持つ共有者の同意で可能ですが、売却のような「変更・処分」は全員の同意が必須です。たとえ99%の持分を持っていても、残り1%の共有者が反対すれば、全体を売ることはできません。
一方、自分の持分のみを売ること(持分売却)は、他の共有者の同意なしに単独で行えます(民法206条)。ただし、買い手が見つかりにくく、価格も大幅に割り引かれる点は注意が必要です。この「全体売却か持分売却か」という選択が、共有名義の不動産売却における最初の分岐点になります。

共有名義の不動産を売却する方法は、大きく4つあります。自分の状況(共有者との関係・同意の見通し・ローン残債の有無など)に合わせて最適な方法を選びましょう。
最もスタンダードで手取り額が最大化される方法が「換価分割(かんかぶんかつ)」です。共有者全員が売却に同意し、不動産全体を市場価格で売却して、売却代金を持分割合に応じて分配します。
買い手にとっては通常の不動産売買と変わらないため、買い手が見つかりやすく、売却価格も市場相場で設定できます。全員合意が前提になりますが、関係性が良好であれば最初に検討すべき方法です。なお、全員合意の売却手続きでは、共有者全員の実印・印鑑証明書・住民票が必要になります。
他の共有者が「お金でもらえれば売却に参加しなくて良い」という意向の場合、自分が共有者の持分を買い取り、単独名義にしてから売却する方法があります。
買取価格は持分割合に応じた時価相当額が目安です。例えば4,000万円の物件で他の共有者が1/2を持っている場合、2,000万円程度で買い取ることになります。資金力が必要ですが、売却プロセスをシンプルにできるメリットがあります。購入資金が不足している場合は、持分取得専用のローンを扱う金融機関もあります。買い取り後は単独名義となるため、通常通りの売却ができます。
逆に、自分が「とにかく共有関係から抜け出したい」という場合、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう方法があります。他の共有者が同意して購入してくれれば、共有関係をスッキリ解消できます。
他の共有者に資金余力がある場合に有効ですが、相手が同意しなければこの方法は取れません。また、売却価格(持分の時価相当額)について合意が必要なため、事前に不動産会社に査定を依頼して市場価格の目安を把握しておくと交渉がスムーズになります。
他の共有者の同意が全く得られない最終手段のひとつが、自分の持分を不動産買取業者などの第三者に売却する方法です。持分売却は他の共有者の同意不要で単独で行えます。
ただし、持分のみを取得する買い手は非常に限られており、価格は通常価格(全体売却時の持分相当額)の50〜70%程度まで下がるケースが多いです。また、見知らぬ第三者が共有者に加わることで、他の共有者との関係がさらに複雑になる可能性があります。「共有関係から一刻も早く離脱したい」「現金が必要だ」という事情がある場合に、最後の手段として検討する方法です。

全員合意で不動産全体を売却する場合(換価分割)の手続きの流れを、STEP順に解説します。全体の流れを把握しておくことで、共有者への説明や調整がスムーズになります。詳細な不動産売却の流れは不動産売却の流れ完全ガイド|仲介と買取の違いを徹底比較もご参照ください。
まず、共有者全員で「いつ・いくら以上で・どの方法で売るか」の合意を形成します。この段階が最も重要で、時間がかかることも多いです。売却に向けた話し合いを進める前に、不動産会社への査定依頼で「実際にいくらで売れるか」を把握しておくと、数字に基づいた具体的な議論ができます。
合意形成を円滑に進めるためのポイントは以下のとおりです。
全員合意が取れたら、不動産会社に査定を依頼します。共有名義の場合でも、通常の不動産売却と同様に媒介契約(仲介の契約)を結べます。複数の不動産会社から査定を取り、最も適切な会社を選ぶことが大切です。査定依頼には不動産一括査定サイトの選び方を活用すると、複数社の査定価格を比較できます。
媒介契約書(不動産会社との契約書)には、共有者全員の署名押印が必要です。どこかひとりが欠けても契約は成立しません。もし遠方の共有者がいる場合は、委任状を作成して代理人を立てることが可能です。委任状は法定の書式はないものの、氏名・住所・委任する行為の内容を明記し、実印で押印するのが一般的です。
買主が見つかり売買契約を締結する際にも、共有者全員の署名・押印(実印)と印鑑証明書の提出が必要です。契約当日に全員が立ち会えない場合は、委任状に基づいて代理人が署名できます。
共有名義の売買契約は複数名が関わるため、書類の量も多くなります。なお、売買契約書には収入印紙が必要で、4,000万円の物件の場合は1万円の印紙税がかかります(共有者間で按分)。
残代金の決済と物件の引き渡しが完了したら、売却代金から仲介手数料・登記費用・ローン残債などを差し引いた残額を、持分割合に応じて各共有者に分配します。
実務上、振込先口座を決済日前に確認しておくことが重要です。代金の受け取り方法や配分について共有者間で事前に合意しておきましょう。また、持分割合と異なる配分を行う場合は、贈与税の問題が生じることがあるため、税理士への確認が必要です。
売却によって利益(譲渡所得)が生じた場合は、翌年の2月〜3月に確定申告が必要です。共有者それぞれが個別に申告します。譲渡所得は「売却価格 - 取得費 - 譲渡費用」で計算し、各共有者が持分に応じた額をそれぞれ申告します。
税金の計算方法や3,000万円特別控除については後述します。詳しくは不動産売却の税金と節税方法|3,000万円控除を使いこなす完全ガイドもご参照ください。

共有者が売却に同意しない場合、まず取るべき行動は「冷静な話し合いの継続」です。いきなり法的手段に移ると関係が悪化し、解決がさらに難しくなります。段階的に以下の3つの解決策を検討しましょう。
共有者が同意しない理由には「感情的な反発(実家への思い入れ)」「売却後の生活への不安」「価格への不満」「ローン返済問題」など様々なケースがあります。まずはその根本的な原因を探ることが大切です。
話し合いを進めるために有効な手段として、以下のものが挙げられます。
購入経験者からよく聞かれるのが「相続で共有名義になったが、ひとりが実家に思い入れがあって売れなかった」というケースです。また「共有者のひとりが認知症になってしまい本人の同意確認ができなくなった」という相談も増えています。感情面への配慮と、将来リスクの数字による説明を組み合わせることが話し合いの成否を大きく左右します。
共有物分割請求とは、裁判所を通じて共有状態を強制的に解消できる法的手段です(民法258条)。話し合いで解決できない場合に活用します。
手続きの流れは以下のとおりです。
3つの分割方法について、以下のとおり整理します。
分割方法 | 内容 | 採択される状況 |
|---|---|---|
換価分割(競売) | 競売で売却し代金を分配 | 最も一般的。不動産を現金化したい場合 |
代償分割(価格賠償) | 一方が他方の持分相当額を支払い単独所有 | 一方に資力がある場合 |
現物分割 | 不動産を物理的に分ける | 土地などで分割可能な場合(建物は困難) |
手続きにかかる費用と期間の目安(弁護士費用含む)は以下のとおりです。
段階 | 費用の目安 | 期間の目安 |
|---|---|---|
共有物分割調停(家裁) | 数千円〜数万円(申立費用) | 3〜6ヶ月 |
共有物分割請求訴訟(地裁) | 弁護士費用含め50〜150万円 | 6ヶ月〜1年以上 |
競売(確定後) | 競売費用(市場価格比20〜30%目減り) | 6ヶ月〜1年 |
競売になると市場価格より大幅に安く売れてしまうため、可能であれば訴訟の過程で和解(任意売却)を目指すのが実務上のベストプラクティスです。弁護士への早期相談を強くお勧めします。
法的手段を取らずに、自分だけ共有関係から抜け出す方法が「持分売却」です。共有持分を専門に買い取る業者(買取業者)に売却することで、他の共有者の同意なしに売却が完了します。
ただし価格面でのデメリットは大きく、市場価格(全体売却時の持分相当額)の50〜70%程度での取引が多いです。「早急に現金化したい」「共有者との関係を完全に断ち切りたい」「訴訟費用を掛けるよりも早く解決したい」という事情がある場合に、最終手段として検討する方法です。複数の買取業者から見積もりを取り、最も良い条件を引き出しましょう。

共有名義の売却で特にトラブルが多い「離婚ケース」と「相続ケース」について、それぞれの注意点を詳しく解説します。
離婚時に共有名義の不動産を売却する場合、財産分与(ざいさんぶんよ)と住宅ローン残債の処理が最大の課題になります。
財産分与の原則: 婚姻中に形成した財産は原則2分の1ずつ分与されます。売却して現金化してから分ける「換価分割」が最もシンプルな解決策です。ただし、婚姻前から所有していた不動産や相続で取得した不動産は「特有財産」として分与対象外になる場合があります。
住宅ローンが残っている場合の注意点:
タイミングについて: 一般的には「離婚前(婚姻中)に売却して代金を分配する」方がシンプルです。離婚後に売却すると、共有者(元配偶者)間の合意形成が難しくなるケースがあります。ただし、税金面(3,000万円特別控除の配偶者への適用要件など)を確認した上でタイミングを決めましょう。弁護士と税理士に同時に相談することをお勧めします。
相続で複数の子ども・孫・兄弟が共有名義になっている場合、人数が多いほど合意形成が難しくなります。詳細な相続不動産の売却手順については相続した不動産の売却方法|手続きの流れと税金対策もご参照ください。
相続ケース特有の問題:
不動産のプロが注意点として挙げるのは「相続登記を何年も放置したことで、気づいたら30名以上の共有者になっていた」というケースです。早期に遺産分割協議を行い、可能な限り単独名義または少数の共有にすることが長期的には最善策です。

共有名義の不動産売却では、税金・費用の計算が各共有者で個別になります。節税効果と手取り額を正確に把握してから交渉に臨みましょう。
共有名義の不動産売却では、要件を満たす各共有者がそれぞれ3,000万円特別控除を適用できます。これは共有名義における最大の税制メリットです。
3,000万円特別控除(居住用財産の特別控除)とは、マイホームを売却した際に譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例です(租税特別措置法35条)。
共有名義の場合、共有者AとBがそれぞれ要件を満たせば、Aに3,000万円・Bにも3,000万円、合計6,000万円分の控除が可能です。4,000万円の物件を2人で半分ずつ売却する場合、各人の売却価格は2,000万円。取得費が十分に高い物件でなければ、譲渡所得税がゼロになるケースも少なくありません。
ただし以下の要件を満たす必要があります。
離婚の場合でも、元配偶者への売却でなければ基本的に適用できますが、詳細は税理士に確認しましょう。
当サイトが集計した国土交通省の実取引データによると、東京都新宿区の中古マンション成約中央値は2025年第3四半期で5,000万円となっています(取引件数172件)。以下は4,000万円の中古マンションを2名(1/2持分ずつ)で売却する場合の概算シミュレーションです。
項目 | 合計(物件全体) | 共有者A(1/2持分) | 共有者B(1/2持分) |
|---|---|---|---|
売却価格 | 4,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 |
仲介手数料(3%+6万円+消費税) | 約138万円 | 約69万円 | 約69万円 |
登記費用・司法書士報酬 | 約15万円 | 約7.5万円 | 約7.5万円 |
印紙税(1,000万〜5,000万円の場合) | 1万円 | 約0.5万円 | 約0.5万円 |
引越し費用(目安) | 約30万円 | 約15万円 | 約15万円 |
手取り概算(諸費用控除後) | 約3,816万円 | 約1,908万円 | 約1,908万円 |
※当サイト独自試算。実際の手取り額は取得価格・保有期間・各種特例適用の有無により異なります。また住宅ローン残債がある場合はその返済も手取りから差し引かれます。税務上の判断は税理士にご相談ください。
自分の持分のみを第三者に売却する場合、一般的に時価(全体売却時の持分相当額)の50〜70%程度まで価格が下がります。4,000万円の物件で1/2持分を持つ場合、理論値は2,000万円ですが、持分売却では1,000〜1,400万円程度になることが多いです。
なぜこれほど安くなるのかというと、「持分のみを取得した買い手(投資家や買取業者)にとって、残りの共有者がいる限り物件を自由に使用・転売できないリスクがあるから」です。持分買取業者は、購入後に他の共有者との交渉(持分買取や共有物分割請求)を行い、最終的に物件全体の権利を取得することで利益を得るビジネスモデルです。そのリスク分が価格に反映されます。

実際に共有名義の不動産売却を進めると、想定外の問題が生じることがあります。よくある失敗とその対処法を事前に把握しておきましょう。
共有者のひとりと長年連絡が取れない場合、その人の同意なしに全体売却はできません。こうした場合に活用できるのが「不在者財産管理人(ふざいしゃざいさんかんりにん)」の制度です。
不在者財産管理人とは、行方不明の人(不在者)の財産を管理する人を、家庭裁判所が選任する制度です(民法25条)。管理人が選任されれば、家庭裁判所の許可のもとで不在者の持分についても売却手続きを進めることができます。
申立先は家庭裁判所で、費用は申立費用数万円+弁護士費用(選任される管理人への予納金含め数十万円)、期間は数ヶ月〜半年程度かかります。早めに弁護士への相談を始めることで、手続きがスムーズになります。
共有者のひとりが認知症などで判断能力を失った場合、本人の意思確認ができないため、通常の売却手続きが困難になります。「認知症になる前は売却に同意していたのに、確認ができなくなってしまった」というケースは増加傾向にあります。
こうした場合は「成年後見制度(せいねんこうけんせいど)」を利用します。家庭裁判所が選任する成年後見人が本人に代わって法律行為を行えますが、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が別途必要です。
認知症の進行前に「任意後見契約」を締結しておくことで、将来に備えることができます。共有者に高齢者がいる場合は、早めに専門家(司法書士・弁護士)への相談を検討しましょう。
不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要で、1人の意思だけでは売れません(民法251条)。ただし、自分の持分のみであれば他の共有者の同意なしに売却できます。持分売却は権利として認められていますが、価格が市場価格(全体の持分相当額)の50〜70%程度まで下がるデメリットがあります。まず全員合意での売却を目指し、難しい場合に持分売却や共有物分割請求を検討する順番が最も合理的です。
行方不明の共有者がいる場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てることで対処できます。選任された管理人が不在者の代理として売却手続きに参加できます。手続きには数ヶ月〜半年程度かかります。また、7年以上行方不明の場合は「失踪宣告」の申立も検討できます。いずれも弁護士への早期相談が解決への近道です。
一般的には「離婚前(婚姻中)に売却して代金を分配する」方がシンプルです。離婚後に売却すると、共有者(元配偶者)間の合意形成が難しくなるケースがあります。ただし住宅ローンが残っている場合は金融機関の関与が必要なため、弁護士・司法書士に相談しながら最適なタイミングを決めましょう。税金面(3,000万円特別控除の適用要件など)の確認も忘れずに。
一般的に、持分売却の価格は「不動産全体の時価 × 持分割合」で算出した金額の50〜70%程度が目安です。例えば4,000万円の物件で1/2持分を持つ場合、理論値では2,000万円ですが、実際の取引では1,000〜1,400万円程度になることが多いです。複数の買取業者から見積もりを取り、条件を比較した上で判断しましょう。
共有物分割請求(共有物分割調停→訴訟)にかかる費用は、弁護士費用を含めて50〜150万円程度が目安です。期間は調停・訴訟を合わせて1年以上かかるケースが多いです。さらに競売になると売却価格が市場価格より20〜30%程度下がります。できる限り話し合いでの解決を目指し、法的手段は最終手段として位置づけ、早めに弁護士に相談しておくことをお勧めします。
共有名義の不動産売却についてのポイントをまとめます。
共有名義の不動産売却は、通常の売却よりも複雑で時間がかかります。まずは不動産会社に査定を依頼して「実際にいくらで売れるか」を把握することが、共有者との交渉を進める第一歩です。状況に応じて弁護士・司法書士・不動産会社を組み合わせ、スムーズな解決を目指しましょう。