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マンションの管理費・修繕積立金が上がり続けるのは、建設コスト高騰・人件費上昇に加え、新築時にあえて低く設定する「段階増額積立方式」が主因です。国土交通省の調査では全国の36.6%が積立金不足という結果も出ており、購入前後を問わず実態を知っておく必要があります。
この記事でわかること
マンションを購入・保有していると、「管理費や修繕積立金が値上がりした」という話を耳にすることが増えています。実際、建設コストや人件費の上昇を背景に、マンションの管理費・修繕積立金の問題は深刻化しており、国土交通省の調査では全国のマンションの約3件に1件で積立金不足が発生していると指摘されています。この記事では、なぜ管理費・修繕積立金が上がり続けるのか、その構造的な理由と全国的な実態を国土交通省のデータをもとに解説し、購入前後の確認ポイントと、積立金が不足していた場合の対応まで整理します。マンション価格の高止まりの背景については、「新築マンション価格が下がらない3つの理由|建設コスト・需給・金利の現状」もあわせてご参照ください。

管理費(かんりひ)とは、マンションの共用部分の日常管理・清掃・管理員人件費などに使われる費用です。修繕積立金(しゅうぜんつみたてきん)とは、将来の大規模修繕工事に備えて毎月積み立てる資金で、10〜15年ごとに行われる大規模修繕の費用(1戸あたり100〜200万円規模)を賄います。両者は会計上も区分されており、修繕積立金を管理費に流用することは原則できません。国土交通省ガイドラインが示す「目安」は、あくまで実際に作成された長期修繕計画の事例を集計した参考値であり、目安の幅に収まっていないからといって直ちに不適切と判断されるわけではない、という位置づけである点も押さえておきましょう。
国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)は、全国366事例の長期修繕計画を集計し、建物の規模別に月額の目安(専有面積あたり・機械式駐車場を除く)を示しています。専有面積70㎡のモデルケースに換算すると、次のとおりです。
建物規模(延床面積・階数) | ㎡単価の平均値 | 70㎡換算・月額目安 |
|---|---|---|
5,000㎡未満(小規模・20階未満) | 335円/㎡・月 | 約23,450円 |
5,000〜10,000㎡(20階未満) | 252円/㎡・月 | 約17,640円 |
10,000〜20,000㎡(20階未満) | 271円/㎡・月 | 約18,970円 |
20,000㎡以上(20階未満) | 255円/㎡・月 | 約17,850円 |
20階以上(超高層) | 338円/㎡・月 | 約23,660円 |
あくまで「事例の平均値」であり、実際の額は事例の3分の2が収まる幅(例えば10,000〜20,000㎡なら200〜330円/㎡・月)の範囲でばらつきます。管理費は規模・立地・設備により差が大きく、一般的な目安は1戸あたり月1〜2万円程度とされますが、長期修繕計画と合わせて確認することが重要です。タワーマンションに固有の高コスト構造(一般的なマンションの約2倍)はタワーマンション市場2026|価格・修繕費・空室リスクで解説しています。
修繕積立金の会計には、駐車場や専用庭の使用料の一部を繰り入れているマンションも多くあります。国土交通省ガイドラインは、実際に集められている使用料を上回る金額を繰入額として見込むことは避けるべきとしており、特に駐車場使用料は稼働率によって金額が変動しやすい点に注意が必要です。長期修繕計画を確認する際は、修繕積立金そのものの月額だけでなく、この駐車場使用料等からの繰入れをどの程度見込んでいるかもあわせて確認すると、将来の値上げリスクをより正確に把握できます。

管理費・修繕積立金が値上がりし続ける背景には、主に3つの構造的な理由があります。
大規模修繕工事にかかる費用は、建設資材と工事費(職人の人件費)で構成されます。国土交通省「建設工事費デフレーター」(2015年度=100)は2025年度に130を超える水準まで上昇しており、過去10年でおよそ3割のコスト上昇が起きています。円安の定着やエネルギー価格の高止まりを背景に、生コンクリートや鋼材といった主要資材の価格上昇が続いていることが主因です。10〜15年前に策定した長期修繕計画の積立金額では、当時の工事費を前提にしているため、実際の工事発注時に見積もりが計画額を大幅に超過するケースが増えています。外壁塗装・屋上防水・給排水管の更新など、工事項目ごとに使用する資材が異なるため、上昇の影響度も工事内容によって差が出る点には留意が必要です。
マンション管理員・清掃員の人手不足が深刻化しており、人件費が上昇しています。公共工事設計労務単価は10年以上連続で引き上げが続いており、同様の人手不足は建設業に限らず管理業界にも及んでいます。特に大都市圏では管理員の採用が困難になっており、管理費の引き上げや、日中のみ管理員が勤務する「日勤化」、そもそも管理員を配置しない「無人化」への移行を余儀なくされるマンションも増えています。管理員体制の変更は管理費の水準だけでなく、共用部の清掃頻度や防犯面にも影響するため、購入前に現状の勤務形態を確認しておくとよいでしょう。
多くの新築マンションは、販売時の月額負担を軽くするために修繕積立金を新築当初は低く設定し、段階的に引き上げていく「段階増額積立方式」を採用しています。国土交通省ガイドラインは、この方式の初期額を「均等積立方式にした場合の基準額の0.6倍以上」、最終額を「基準額の1.1倍以内」とする目安を示しており、この上限どおりに引き上げても初期額から最終額まで最大で約1.83倍の値上げ幅になります。問題は、この「計画どおりの引き上げ」が区分所有者の合意形成の壁で先送りされやすいことです。次のセクションで、この負担差を具体的な金額で試算します。

段階増額積立方式が「新築時の負担を軽く見せる」仕組みであることを、国土交通省ガイドラインの基準額をもとに具体的な金額でシミュレーションします(scripts/repair_reserve_simulation.pyによる当サイト独自試算)。
このクラスの基準額(計画期間全体の平均値)は271円/㎡・月です。ガイドラインの基準に沿って初期額を基準額の0.6倍、最終額を1.1倍に設定し、計画初年度から5年ごとに3回引き上げる4段階のモデル(ガイドラインが例示する引き上げパターンに準拠)で35年間の負担を試算すると、次のようになります。
項目 | 金額・倍率 |
|---|---|
初期月額(基準額の0.6倍) | 約11,400円 |
最終月額(基準額の1.1倍) | 約20,900円 |
値上げ倍率 | 約1.83倍 |
計画どおり4段階で引き上げた場合の35年累計 | 約677万円 |
初期額のまま据え置かれた場合の35年累計 | 約478万円 |
差額(据え置きによる資金ギャップ) | 約199万円 |
興味深いのは、この1.83倍という値上げ倍率は、マンションの規模によらずほぼ一定になるという点です。ガイドラインの基準(最終額は基準額の1.1倍以内、初期額は0.6倍以上)が比率で決まっているため、小規模マンションでも超高層マンションでも、計画どおりに引き上げれば倍率はおよそ1.8倍前後に収れんします。つまり「うちは大規模マンションだから値上げ幅が大きい/小さい」という規模の問題ではなく、どのマンションにも共通する制度設計上の特徴です。
一方で、約199万円という差額が示すのは、もし2回目以降の値上げが総会で否決・先送りされ、初期額のまま据え置かれた場合、35年間で約200万円分の資金が積み立てられないまま推移するということです。この不足分は、大規模修繕の直前に「修繕一時金」として一括徴収されるか、工事内容の縮小・先送りという形で顕在化します。次のセクションで見る全国36.6%という積立金不足率は、こうした値上げの先送りが積み重なった結果と考えられます。
※本試算は国土交通省ガイドラインのモデルに基づく当サイト独自の試算であり、実際の積立額・値上げ幅は管理組合の運営方針や工事内容により異なります。小規模マンション(5,000㎡未満)・超高層マンション(20階以上)では基準額自体が中規模より高いため、同じ1.83倍でも据え置き時のギャップは200万円台後半に達する計算になり、規模が大きいほど「据え置きのツケ」も大きくなる点は覚えておきたいポイントです。

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」によると、長期修繕計画に対して修繕積立金が「不足している」と回答した管理組合は全国の36.6%にのぼります。内訳を見ると、「余剰がある」が39.9%、「不明」が23.5%で、不足と回答した管理組合のうち「20%を超える不足」があるものが11.7%を占めています。この調査は5年ごとに実施される政府統計(e-Stat「マンション総合調査」)で、全国の管理組合・区分所有者を対象にした大規模なアンケートに基づく数値であるため、一部の事例ではなくマンション管理の全体的な傾向を示す一次データといえます。同調査では、修繕積立金の平均額はこの25年間でおよそ1.8倍に上昇しており、値上げそのものはすでに全国的に進行していることも読み取れます。
積立金不足の状態が続くと、大規模修繕の直前になって「修繕一時金」の一括徴収が必要になったり、工事範囲の縮小・先送りによって建物の老朽化が進んだりするリスクがあります。特に「20%を超える不足」がある11.7%のマンションでは、次回の大規模修繕までに追加の値上げか一時金徴収がほぼ避けられない水準にあると考えられます。工事の先送りが繰り返されると、外壁の劣化や給排水管の腐食といった建物性能への直接的な影響が生じるだけでなく、そうした管理不全の履歴自体が中古市場での評価を下げる要因にもなります。中古マンションの売買では、こうした修繕履歴・積立金の状況が価格に反映される傾向が強まっており、管理状態と価格の関係についてはマンション価格2026|新築・中古別データとエリアの見極め方で解説しています。市況全体における修繕費高騰の位置づけは首都圏中古マンションはバブル超えから調整へ|2026年の売買判断もあわせてご参照ください。

国土交通省は、修繕積立金の額の目安や積立方法についてガイドラインで方針を示していますが、既存のマンションについてこのガイドラインに法的拘束力はなく、管理組合の自主的な判断に委ねられています。ただし、間接的にガイドラインの考え方を普及させる制度が近年整備されています。
前述のとおり、段階増額積立方式を採用する場合、初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は基準額の1.1倍以内とすることが望ましいとされています。この基準自体は令和3年9月の改訂時点から示されており、令和6年6月の改定では「新築マンションの多くが段階増額積立方式と修繕積立基金の組み合わせを採用している」という実態の記述が追加されるなど、内容が補強されました。ガイドラインはまた、どの積立方式を採用していても5年程度ごとに長期修繕計画を見直し、それに基づいて積立金を設定し直すことを求めています。
2022年に始まった「マンション管理計画認定制度」は、長期修繕計画の内容(7年以内の見直し・30年以上の計画期間・均等積立方式または適切な段階増額方式の採用など)が一定の基準を満たす管理組合を自治体が認定する制度です。認定を受けると住宅金融支援機構の融資条件優遇などのメリットがあり、間接的に均等積立方式への誘導・値上げの先送り防止につながる仕組みとして位置づけられています。認定制度自体もガイドラインと同様に法的拘束力を強制するものではなく、管理組合の任意の申請に基づきます。
管理計画認定を受けたマンションのうち、修繕積立金の額を長期修繕計画作成ガイドラインの基準まで引き上げ、大規模修繕工事を実施した場合、翌年度の建物部分に係る固定資産税が一定割合(参酌基準は3分の1、市町村の条例で6分の1〜2分の1の範囲)減額される「マンション長寿命化促進税制」が設けられています(1戸あたり100㎡相当分が上限)。これは「値上げをすると税制優遇を受けられる」という、値上げの合意形成を後押しする数少ない具体的なインセンティブです。総会で値上げの提案が難航している場合、この税制の存在を判断材料の一つとして示すことも有効です。適用期限や申請手続きの実務的な注意点はマンション減税は来年3月まで|管理で差がつくで解説しています。

中古・新築を問わず、購入前には次の5点を確認しましょう。いずれも売主・売買仲介業者から資料を取り寄せれば確認できる項目です。

購入後、あるいは保有中のマンションで積立金不足が発覚した場合の実務対応を整理します。
積立金が大規模修繕の見積額に対して不足している場合、不足分を区分所有者から一時金として徴収するケースがあります。金額は工事規模や不足の程度によって数十万円〜100万円超まで幅がありますが、総会での特別な合意が必要になることが多く、負担能力が乏しい区分所有者がいると合意形成が難航しやすい点に注意が必要です。前述の独自試算のとおり、値上げを先送りしたことで生じる資金ギャップが35年間で約200万円規模に達するケースもあり、一時金として一括請求されると1戸あたりの負担額もそれに応じて大きくなります。工事の一部を先送りしたり、仕様のグレードを下げて費用を圧縮したりする「工事内容の見直し」で対応する管理組合もありますが、これは建物の資産価値の低下につながりかねない対症療法である点に留意が必要です。
一時金の徴収が難しい場合、管理組合として金融機関から借り入れる選択肢もあります。代表的なものが住宅金融支援機構の「マンションすまい・る融資(管理組合申込み)」で、大規模修繕工事や長期修繕計画の見直しに伴う資金を、区分所有者個人ではなく管理組合が主体となって借り入れられる制度です。返済原資は毎月の修繕積立金となるため、実質的には一時金徴収の代わりに将来の積立金から分割で返済する仕組みといえます。前述のマンション管理計画認定を受けている場合は、融資条件が優遇されることがあります。個々の区分所有者が一時金の支払いに充てる場合は、同機構の「マンション共用部分リフォーム融資(高齢者向け返済特例)」のように、個人が利用できる制度も別途用意されています。
修繕積立金の額の変更は、区分所有法上、管理組合の総会決議(通常は普通決議)で決まります。区分所有者として総会に出席・委任状提出を通じて意見を反映させることができますが、多数決により否決された場合は従う必要があります。値上げが繰り返し否決される管理組合ほど、前述の「据え置きによる資金ギャップ」が拡大しやすいため、早期に長期修繕計画を見直し、根拠となる数値(本記事の試算のような具体的な金額)を示して合意形成を進めることが望まれます。特に高齢の区分所有者が多い管理組合では、目先の負担増への抵抗感が強くなりがちですが、値上げを先送りした場合の一時金の方が単発の負担額としては大きくなりやすいことを、具体的な試算とあわせて説明することが合意形成の鍵になります。
国土交通省ガイドラインの目安では、専有面積70㎡のマンションで月額1.8万円〜2.4万円程度(建物規模による)が一つの目安です。ただし個別の物件が適正かどうかは、㎡単価換算・積立残高の充足率など複数の指標で診断する必要があります。詳しい診断方法は中古マンション購入完全ガイドで解説しています。
管理費が著しく低い場合、管理が不十分だったり、将来的な大幅値上げのリスクがある可能性があります。適正な管理費の目安は一般的に1戸あたり月1〜2万円程度ですが、規模・設備・立地によって異なるため、長期修繕計画と合わせて確認することをおすすめします。
管理費・修繕積立金の変更は管理組合の総会決議で決まります。区分所有者として総会に出席・委任状提出を通じて意見を反映させることができますが、多数決により否決された場合は従う必要があります。
支払いを滞納すると管理組合から督促が来て、最終的には法的手続き(訴訟・競売)に発展するケースもあります。支払いが困難な場合は早めに管理組合または専門家に相談することが重要です。
総支払額で見れば大きな差はなく、将来にわたって安定的に積み立てられる均等積立方式の方が、国土交通省も「望ましい方式」としています。段階増額方式は新築時の負担を軽くできる一方、前述のとおり値上げが先送りされると資金ギャップが生まれるリスクがあります。
長期修繕計画の内容や積立金の設定方法が一定の基準を満たす管理組合を自治体が認定する制度です。認定を受けると住宅金融支援機構の融資条件優遇などのメリットがあります。
管理計画認定を受けたマンションが修繕積立金を基準まで引き上げて大規模修繕を実施した場合、翌年度の固定資産税(建物部分)が一定割合減額される「マンション長寿命化促進税制」があります。すべてのマンションが対象になるわけではなく、管理計画認定や積立金の引き上げなど複数の要件を満たす必要があります。
はい。タワーマンションは大規模修繕に特殊な足場や設備更新費用がかかるため、一般的なマンションの約2倍の水準になる傾向があります。詳しくはタワーマンション市場2026|価格・修繕費・空室リスクで解説しています。
専用庭や駐車場の使用料の一部を修繕積立金会計に繰り入れているマンションは多くありますが、実際に集められている金額を上回る額を繰入額として見込むことは避けるべきとされています。特に駐車場の稼働率は今後の車離れ等により低下する可能性があり、繰入額を過大に見積もっている長期修繕計画は将来の積立金不足につながりやすい点に注意が必要です。
マンションの管理費・修繕積立金は、住宅購入後も長期にわたり家計に影響します。特に段階増額積立方式を採用している物件では、分譲時の月額だけを見て購入を決めると、数年後・十数年後の値上げで想定外の負担増に直面しかねません。購入前に長期修繕計画と積立金の現況を確認し、将来のコストも含めた判断をされることをおすすめします。個別物件の積立金が適正かどうかは中古マンション購入完全ガイドの診断方法を、マンションと一戸建てとの維持費の違いはマンションか一戸建てか|実取引データで見る価格・広さの違いと選び方をあわせてご参照ください。管理費の心配が少ない一戸建ての選択肢については、中古一戸建て購入完全ガイド|費用・注意点・リノベーションもご覧ください。
データ取得日:2026-08-31(国土交通省・住宅金融支援機構の各公表資料に基づく)
最終更新日:2026-08-31