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退去時に本当に払う義務があるのは、ハウスクリーニング代などの実費と、自分の故意・過失で壊した箇所の補修費だけです。日焼けによるクロスの変色や家具の設置跡といった「通常損耗・経年変化」は、原則として大家さん(貸主)負担になります。
この記事でわかること
独立行政法人の国民生活センターは2026年2月、「賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!」とする注意喚起をあらためて公表しました。原状回復に関する相談は毎年1万3,000〜4,000件寄せられ、賃貸住宅に関する相談の約4割を占めます。夏は転勤や住み替えで退去が増える時期。「敷金がほとんど返ってこなかった」「高額な請求書が届いた」と慌てないために、精算の正しいルールを知っておきましょう(出典:国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!」)。

敷金は、家賃の滞納や借主が負担すべき補修費を担保するために、あらかじめ大家さんに預けておくお金です。2020年4月に施行された改正民法(第622条の2)では、敷金は「退去して部屋を明け渡したあと、未払いの債務を差し引いた残額を返還するもの」と条文で明確に定められました。
つまり、退去費用の精算とは「預けた敷金から、借主が負担すべき費用を引き、残りを返す」手続きです。ここで大切なのは、「敷金が全額返ってこない=損をした」ではなく、差し引かれた費用の中身が妥当かどうかという視点です。不動産取引の現場でも、精算内容をよく確認せずサインしてしまい、あとで「払いすぎた」と気づくケースが少なくありません。

改正民法第621条と国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、普通に生活していて生じる「通常損耗」と、時間の経過による「経年変化」は、借主の原状回復義務に含まれないとされています。これらは家賃にあらかじめ含まれていると考えられているためです。
具体的に、次のようなものは原則として大家さん負担です。退去の相談で「これを請求された」という声が多い項目でもあります。
これらを補修費として請求された場合は、「通常損耗ではないか」と根拠を示して確認する余地があります(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)。

一方で、借主が負担すべきなのは、故意・過失による損傷や、「善管注意義務違反」(借りている部屋をきちんと管理する義務を怠ったこと)、通常の使い方を超える損耗です。次のようなケースが該当します。
境界線として覚えておきたいのが、「画鋲はOKでも、釘はNG」という考え方です。ポスターを貼るための画鋲の穴は生活上必要な範囲とされますが、下地まで傷める釘やネジの穴は借主負担になりやすい、という違いがあります。

請求額が妥当かどうかを判断するうえで、必ず押さえておきたいルールが2つあります。
1つ目は「経過年数による減価」、いわゆる6年ルールです。クロスやクッションフロアなどは、住んだ年数が長いほど価値が下がっていくと計算されます。ガイドライン上、クロスは6年住むと残存価値が1円まで下がるとされ、たとえ借主負担で張り替えることになっても、負担するのはごくわずかになります。「新品同様に全額請求」は、長く住んだ人にとっては過大な請求である可能性があります。
2つ目はクリーニング特約・原状回復特約です。契約書に「退去時にクロス・床の張り替え費用を100%借主が負担する」といった特約が入っていることがあります。ただし、通常損耗まで一律に借主へ負担させる包括的な特約は無効とされる余地があります。有効と認められるのは、負担する範囲や金額が契約書に具体的に書かれ、借主がそれを理解して合意している場合に限られます。契約前には特約の内容を必ず確認しましょう。

もし想定を超える請求を受けても、すぐに泣き寝入りする必要はありません。次の順番で冷静に対応しましょう。
不動産取引の現場では、ガイドラインを示しながら「これは通常損耗では」「経過年数の減価は反映されていますか」と丁寧に申告することで、良心的な管理会社ならクリーニング代のみの精算に落ち着く例も多く見られます。感情的にならず、根拠を持って交渉することが大切です。
いいえ。敷金の有無にかかわらず、通常損耗・経年変化が大家さん負担という原則は変わりません。敷金がない場合は精算で相殺できないため、借主負担分を退去後に請求される形になりますが、負担の範囲そのものは同じです。
契約書に「ハウスクリーニング費用は借主負担」と具体的に定められていれば、支払うのが一般的です。ただし金額の記載がなかったり、相場から著しく高額な場合は、内訳の説明を求めて確認する余地があります。
立会いなしでも精算は進みますが、後日の見積内容をうのみにせず、明細と写真を照らし合わせて確認しましょう。可能であれば、退去前に自分で室内の写真・動画を残しておくと安心です。
退去精算で損をしないことは、次の住み替えや持ち家購入に向けた頭金を守ることにもつながります。賃貸と購入で迷っている方は家賃値上げ通知が急増|断れる?いま借りるvs買うも参考に、住まいの資金計画を一度整理してみてはいかがでしょうか。