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この記事でわかること
親の介護が始まったとき、多くの子世代が直面するのが「家をどうするか」という問題です。親が今住んでいる家をバリアフリーリフォームするのか、子の家の近くに呼び寄せるのか、施設への入居を検討するのか。2026年現在、日本の高齢化はピークを迎えつつあり、介護に伴う住まいの問題は40代・50代の多くの家庭が直面するリアルな課題です。厚生労働省の推計では、2040年には認知症の人が全国で約584万人に達するとされており(出典:厚生労働省 認知症施策)、今から準備しておくことの重要性がますます高まっています。この記事では、介護開始時の住まいの選択肢と実践的な判断基準を解説します。

親の介護が必要になったとき、住まいに関して取りうる選択肢は大きく4つあります。
どの選択肢が最適かは、介護の程度・親の意思・経済状況・子世代の生活スタイルによって異なります。「どれが正解」という答えはなく、親と子が十分に話し合った上で決めることが何より大切です。
2026年時点で日本の65歳以上人口は約3,600万人(総人口の約29%)に達しており、団塊世代(1947〜1949年生まれ)の多くが後期高齢者(75歳以上)になる時期と重なっています。介護需要は急増しており、家族の介護負担と住まいの問題は社会全体の課題です。
要介護度 | 状態の目安 | 住まいの選択肢 |
|---|---|---|
要支援1〜2・要介護1 | 日常生活はほぼ自立。一部の見守り・生活支援が必要 | バリアフリーリフォーム+在宅サービス利用が中心 |
要介護2〜3 | 一定の介護が必要。認知症の症状が出始める場合も | 近居または同居への移行を検討。在宅介護サービスを活用 |
要介護4〜5 | 常時介護が必要。寝たきり・重度認知症など | 施設入居(特別養護老人ホーム・有料老人ホームなど)を検討 |

バリアフリーリフォームとは、高齢者・介護が必要な方が安全に生活できるよう、住宅の段差解消・手すり設置・浴室改修などを行う工事です。介護が必要になる前に行う「予防的リフォーム」も含まれます。住宅購入経験者からよく聞かれるのが「購入時にバリアフリー設計を選んでおけばよかった」という声です。新築・中古住宅の購入時にも将来の介護を見越した間取り・設備選びを意識することをおすすめします。
高齢化の加速に伴い、バリアフリーリフォームの需要は年々拡大しています。リフォーム会社の多くがバリアフリー専門部門を設けており、補助金申請のサポートも行うようになっています。ただし、補助金の手続きを業者が代行する場合でも、最終的な申請責任は施主(リフォームを依頼する側)にあります。業者任せにせず、自分でも制度内容を把握しておきましょう。
工事内容 | 費用の目安 |
|---|---|
手すりの設置(廊下・トイレ・浴室) | 2〜20万円/箇所 |
段差の解消(玄関・廊下・浴室入り口) | 5〜30万円 |
浴室のバリアフリー改修(洗い場・シャワーチェア対応) | 30〜100万円 |
トイレの改修(洋式化・手すり・スペース確保) | 20〜80万円 |
玄関・スロープ設置 | 20〜60万円 |
廊下幅の拡張(車椅子対応) | 50〜200万円 |
ホームエレベーター設置 | 200〜400万円 |
全部をいっぺんにリフォームする必要はありません。不動産のプロが注意点として挙げるのは「一度に大掛かりなリフォームをして費用を使い果たすより、段階的に必要な箇所から対応する方が現実的」という点です。転倒リスク・介護のしやすさを優先して、以下の順で検討することをおすすめします。

バリアフリーリフォームには複数の補助制度があります。適切に活用することで、自己負担を大幅に抑えることができます(出典:住まいサーフィン「介護保険住宅改修費支給」、取得日:2026-06-02)。補助金の重複利用と申請順序の確認については、リフォーム業者またはケアマネジャーに相談しながら進めることをおすすめします。
要支援1以上または要介護1以上の認定を受けた人が、自宅のバリアフリーリフォームを行う場合、改修費用の最大18万円(上限20万円の9割)が介護保険から支給されます。
介護保険の住宅改修費支給を利用する流れは以下の通りです。
事前申請なしに工事を進めると補助が受けられないため、必ず手順を守ってください。ケアマネジャーが手続きをサポートしてくれる場合が多いため、早めに相談することをおすすめします。
2026年も国土交通省主管の「みらいエコ住宅支援事業」が継続されており、バリアフリーリフォームを断熱・耐震改修と組み合わせた場合に数十万〜100万円超の補助が受けられる場合があります。補助額は工事内容・条件によって変わるため、最新の公式情報を確認してください(出典:ハピすむ 補助金情報、取得日:2026-06-02)。
所定のバリアフリー改修工事を行った場合、工事費用の10%を所得税から控除できます(控除上限:60万円)。確定申告(源泉徴収の場合は年末調整)で申告が必要です。
市区町村によっては独自の補助制度があります。東京都や一部の自治体では「高齢者住宅改修費助成事業」として追加補助が受けられる場合があります。お住まいの自治体の窓口(高齢福祉課・住宅課等)に確認しましょう。

親と同居・近居する場合、住まいの面でどのような変更が必要か、メリット・デメリットをあわせて解説します。
2026年現在、子が親の近くに引越す「近居」を支援する自治体が増えています。東京都や一部の自治体では「近居支援補助金」として、引越し費用の一部補助や家賃補助を実施しています。自治体の支援策は年度によって変わるため、移住を検討している地域の自治体ウェブサイトで最新情報を確認してください。
親の自宅または子の自宅を二世帯住宅にリフォーム・建て替えする選択肢です。
項目 | 内容 |
|---|---|
メリット | 緊急時の即対応が可能。見守りが容易。介護費用・生活費の節約。相続税の節税(小規模宅地等の特例) |
デメリット | 生活スタイルの違いによるストレス。プライバシーの確保が難しい。リフォーム・建て替え費用が高額 |
費用目安 | リフォームの場合:300〜700万円程度。建て替えの場合:2,500〜5,000万円以上 |
二世帯住宅のメリット・デメリットについての詳細は二世帯住宅のメリット・デメリット|完全分離型の費用と相続税節税もご覧ください。
同居はせず、近い場所に住む「近居」という選択肢も増えています。不動産取引の現場では「親のそばに引越したが、プライバシーも確保できていい関係が保てている」という声が多く聞かれ、同居より近居を選ぶ家族が増えています。

介護度が重くなったり、自宅での介護が困難になった場合は施設への入居を検討します。
施設の種類 | 月額費用目安 | 特徴 |
|---|---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 10〜15万円 | 要介護3以上が対象。公的施設のため費用は低め。待機が長い |
介護老人保健施設(老健) | 10〜15万円 | リハビリ・在宅復帰を目的。3〜6ヶ月程度の入所が多い |
有料老人ホーム(介護付き) | 15〜35万円 | 入居一時金0〜数百万円。設備・サービスの充実度で差がある |
サービス付き高齢者住宅(サ高住) | 12〜25万円 | 自立〜軽度介護向け。安否確認・生活相談が基本サービス |
施設を選ぶ際は以下のポイントを必ず確認しましょう。
親が施設に入居する場合、残された自宅をどう処理するかも大きな課題です。
実家の売却・相続については実家を相続したらどうする?売却・賃貸・空き家対策の完全ガイドもあわせてご覧ください。

不動産取引の現場では、「介護問題が発生してから慌てて動く」ケースが非常に多いと言われています。以下の注意点を事前に把握しておきましょう。
親が認知症で判断能力を失うと、親名義の銀行口座や不動産の売却・リフォームが原則として本人の同意なしには行えなくなります。この「資産凍結」問題を避けるために、元気なうちに「任意後見制度」や「家族信託」を利用して財産管理を準備しておくことが重要です。
介護保険の住宅改修費支給を受けるには、工事前に市区町村への申請と確認が必要です。工事後に申請してもさかのぼって支給されないケースが多いため、工事着工前の手続きを忘れないようにしましょう。
特別養護老人ホームは待機期間が数ヶ月〜数年になることも珍しくありません。有料老人ホームも人気施設は空きが少ない傾向があります。「入居が必要」となってから動き始めると選択肢が限られます。要介護認定を受けた段階で情報収集を始めることをおすすめします。

「親を施設に入れるのはかわいそう」「できるだけ自宅で介護したい」という気持ちは多くの家族に共通しています。自宅での介護を支えるために、介護保険サービスを最大限に活用しましょう。
サービス名 | 内容 | 利用の目安 |
|---|---|---|
訪問介護(ホームヘルパー) | 自宅に来て身体介護・生活援助を行う | 要介護1〜5 |
訪問看護 | 看護師が自宅を訪問して医療的ケアを行う | 要介護1〜5・医療的処置が必要な場合 |
デイサービス(通所介護) | 日中、施設に通って介護・レクリエーション | 要支援1〜要介護5 |
デイケア(通所リハビリ) | 医療施設でリハビリを受ける | 要支援1〜要介護5 |
ショートステイ(短期入所) | 数日〜数週間の施設一時入居 | 家族が旅行・入院する場合など |
夜間対応型訪問介護 | 夜間に緊急コールや定期巡回 | 要介護3以上・一人夜間が不安な場合 |
介護保険のサービスは1割(所得によっては2〜3割)の自己負担で利用できます。要介護度に応じて月々のサービス利用限度額(区分支給限度基準額)が設定されており、限度額内であれば1〜3割負担で利用できます。限度額を超えた部分は全額自己負担です。

在宅介護は身体的・精神的に非常に負担が大きい作業です。不動産取引の現場でも「介護疲れで仕事を辞め、生活に困って家を売ることになった」というケースが増えているといわれています。介護は長期戦になることを念頭に置き、持続可能な体制を整えることが重要です。
介護保険のサービスを利用するには、まず「要介護認定」を受ける必要があります。申請から認定まで通常1〜2ヶ月かかります。65歳以上で日常生活に何らかの困難が生じ始めた段階で早めに申請することをおすすめします。認定申請の窓口は市区町村の介護保険担当課または地域包括支援センターです。
介護離職は避けることが推奨されています。「介護休業」(最大93日)・「介護休暇」(年5日〜10日)などの制度を活用しながら、仕事を続けられる体制を整えることが重要です。離職すると経済的な余裕がなくなり、家の維持・売却の判断に影響することもあります。

親の介護が長期化するにつれ、親の家(不動産)の活用方法も重要な経済的課題になります。
親が介護状態になる前に、親の家の名義・住宅ローンの残債・相続人の状況を確認しておくことを強くおすすめします。特に以下の点は早めに確認しておきましょう。
これらの情報が不明な場合は、法務局で不動産登記簿謄本を取得することで確認できます。費用は1通600円程度です。
リバースモーゲージとは、自宅を担保にして金融機関から生活資金を借りる仕組みです。自宅に住み続けながら介護費用を調達できます。死亡時に自宅を売却してローンを一括返済します。ただし、自宅の資産価値が下落した場合には相続人が残債を負う可能性があります。
施設入居後に親の家を賃貸に出す場合、「居住用財産の3,000万円特別控除」の適用期間(転居後3年以内の売却)が過ぎないよう注意が必要です。いつまでも賃貸に出し続けると、将来売却時に特別控除が使えなくなる場合があります。
介護保険の要介護・要支援認定の申請は、原則として65歳以上であれば市区町村窓口に申請できます。ただし、40〜64歳でも「特定疾病(脳血管疾患・初老期認知症・関節リウマチなど16疾病)」が原因で介護が必要になった場合は申請できます。申請は本人・家族・ケアマネジャーが代行して行うことが可能です。認定結果が出るまで通常1〜2ヶ月かかるため、状態が変化し始めたら早めに申請することが重要です。
介護が必要になってからではなく、「要支援・要介護の認定を受ける前」から準備することが理想的です。特に浴室・トイレ・廊下などの転倒リスクが高い箇所は、70歳前後を目安にリフォームを検討することをおすすめします。年齢とともに転倒リスクは急激に上昇しており、65歳以上の転倒事故の約半数が自宅内で発生しています(出典:消費者庁データより)。
介護リフォームとは、高齢者・介護が必要な方の生活安全のための改修(手すり・段差解消・浴室改修等)を指します。一般的なリフォームとの主な違いは「介護保険の住宅改修費支給が受けられる」点です。ただし、支給を受けるには要支援・要介護の認定が必要で、工事前の申請手続きが必須です。
持ち家に住宅ローンが残っている場合でも、居住実態があれば問題ありません。ただし転居して賃貸に出す場合は、金融機関への届出と住宅ローンの金利・条件変更が必要になる場合があります。転勤・介護などの事情がある場合は事前に金融機関に相談してください。転勤になったら持ち家はどうする?も参考にしてください。
親が施設入居または死亡した後、親の自宅をどうするかは相続・税金・管理コストを総合的に判断する必要があります。長期間空き家のままにしておくと固定資産税の優遇措置(小規模宅地の特例)が受けられなくなったり、「特定空き家」に指定されるリスクもあります。実家の処分については早めに専門家(税理士・不動産会社)に相談することをおすすめします。
親の介護と住まいの問題は感情が絡む複雑な課題です。「親に施設に行ってほしいが、親は嫌がっている」「きょうだいと意見が合わない」というケースも多いです。早期から話し合いの場を設け、専門家(ケアマネジャー・地域包括支援センター)の力を借りながら、家族全員が納得できる解決策を探すことが大切です。介護と住まいの問題は、先手を打って準備することが最大のリスク回避策です。「まだ元気だから大丈夫」と思わず、60代前後から家族で話し合いを始めることをおすすめします。老後の住み替えについては老後の住み替えとダウンサイジング|50・60代の住まいの選択肢もあわせてご覧ください。