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首都圏の家賃上昇は都心から郊外へ移っており、2026年8月にはシングル向き家賃が東京23区・都下・神奈川・埼玉・千葉の5エリアすべてで過去最高となりました。しかも2026年3月からの上昇率は、23区の+2.2%に対して埼玉+7.6%・都下+7.5%・神奈川+5.6%と、郊外のほうが大きくなっています。
この記事でわかること
2026年10月15日、LIFULL HOME'Sが「マーケットレポート 2026年7-9月版」を公表し、首都圏の賃貸需要が「郊外化・築古化」していると報告しました。9月28日に公表されたアットホームの募集家賃動向(2026年8月分)でも、郊外の家賃が最高値の更新を続けています。この記事は2026年6月に公開した内容を、これらの最新データで全面的に更新したものです。「都心が高いなら郊外へ」という選択がいまどこまで通用するのか、数字で確かめていきます。

2026年の春から夏にかけて、家賃が大きく上がった中心は23区ではなく郊外でした。アットホームが公表したマンションのシングル向き(30㎡以下)の平均募集家賃を、半年前の3月と最新の8月で比べると次のとおりです。
エリア | 2026年3月 | 2026年8月 | 3月からの上昇率 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|
東京23区 | 111,922円 | 114,339円 | +2.2% | +10.0% |
東京都下 | 63,637円 | 68,388円 | +7.5% | +11.9% |
神奈川県 | 78,222円 | 82,593円 | +5.6% | +11.8% |
埼玉県 | 67,526円 | 72,627円 | +7.6% | +10.9% |
千葉県 | 74,459円 | 77,002円 | +3.4% | +8.6% |
出典:アットホーム「全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向(2026年8月)」(2026年9月28日公表)および同2026年3月分。家賃は賃料+管理費・共益費。3月からの上昇率は当サイトが算出。
8月時点で、シングル向きは5エリアすべてが2015年1月以降の最高値です。前年同月比で見ても、都下(+11.9%)と神奈川(+11.8%)が23区(+10.0%)を上回りました。23区のシングル向きは7月に前月比で26カ月ぶりに下落し、8月に再び最高値へ戻ったものの、春以降の上がり方は郊外より緩やかです。
LIFULL HOME'Sの掲載賃料(シングルタイプ)でも同じ傾向が出ています。2026年3月から9月にかけて、23区は138,092円から134,710円へ2.4%下がった一方、都下は+12.1%(72,402円)、神奈川は+6.6%(76,825円)、埼玉は+5.9%(72,279円)、千葉は+3.7%(72,976円)と、郊外はそろって上昇しました(LIFULL HOME'S マーケットレポート月次データを当サイトが集計)。

郊外の家賃が上がっているのは、23区で部屋を探していた人が、予算に合う部屋を求めて郊外や築年数の古い物件へ移っているためです。不動産の現場では「玉突き型の需要移動」と呼ばれる動きで、2026年はそれが問い合わせのデータにはっきり表れました。
LIFULL HOME'Sの7-9月版によると、賃貸の問い合わせ(反響)に占めるエリア別の割合は次のように動いています(前年同期比)。
エリア | シングルタイプ | ファミリータイプ |
|---|---|---|
東京23区 | 50.6%(-0.9pt) | 28.7%(-1.9pt) |
神奈川県 | 17.2%(+0.2pt) | 22.7%(+1.3pt) |
埼玉県 | 11.6%(+0.9pt) | 19.3%(+1.0pt) |
出典:LIFULL「LIFULL HOME'S マーケットレポート 2026年7-9月版」(2026年10月15日公表、対象期間2026年7〜9月)
玉突きは、次の3段階で進んでいます。
つまり、23区の家賃の伸びが鈍っても、それは上昇が止まったことを意味しません。押し出された需要が郊外へ回り、首都圏全体の家賃水準を底上げしているのが2026年秋の姿です。家賃上昇の背景にある構造や、この先の見方については家賃が上がり続ける理由と最新データの解説で整理しています。
郊外の家賃がすべて同じように上がっているわけではありません。需要が流れ込みやすいのは、都心へのアクセスと家賃のバランスがよい物件です。
郊外への引っ越しを考えるときは「郊外だから安い」と考えず、駅・築年数・間取りの条件ごとに相場を確かめることが大切です。

23区から郊外へ引っ越すと、シングル向きの家賃は月3〜4.6万円ほど下がります。ただし郊外の値上がりで、その差は半年前より縮みました。アットホームの2026年8月の平均募集家賃(シングル向き)をもとに試算します。
引っ越し先 | 23区との家賃差(月) | 3月時点の家賃差 | 通勤費増1万円を引いた節約額(月/年) | 初期費用30万円の回収期間 |
|---|---|---|---|---|
東京都下 | 45,951円 | 48,285円 | 35,951円/約43万円 | 約8.3か月 |
神奈川県 | 31,746円 | 33,700円 | 21,746円/約26万円 | 約13.8か月 |
埼玉県 | 41,712円 | 44,396円 | 31,712円/約38万円 | 約9.5か月 |
千葉県 | 37,337円 | 37,463円 | 27,337円/約33万円 | 約11.0か月 |
※当サイト独自試算。家賃差はアットホーム「募集家賃動向」2026年8月・3月のシングル向き(30㎡以下)平均家賃から算出。通勤費の増加を月1万円、引越し代・敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用を30万円と仮定しています。実際の節約額は物件・勤務先・通勤手当の有無により異なります。
ポイントは2つあります。1つ目は、郊外へ移れば今でも年間26万〜43万円ほどの節約が見込めることです。2つ目は、その節約幅が3月から8月までの5か月で、都下で約2,300円、埼玉で約2,700円、神奈川で約2,000円縮んだことです。玉突きで郊外の家賃が上がるほど、引っ越しで浮くお金は減っていきます。
家賃の差だけでなく、通勤時間が増えることの負担も考えておきましょう。片道30分延びれば、1か月の通勤時間は往復で約20時間増えます。節約額をその時間で割った「時給」に納得できるかどうかが、判断の目安になります。在宅勤務の日が多い人ほど、郊外へ移るメリットは大きくなります。
23区の家賃がタイプ別にいくらになっているかは東京23区の家賃の最新水準と賃貸vs購入の比較で、郊外で家を買う選択肢まで考えるなら住宅ローンの頭金はいくら必要?も参考にしてください。
郊外への引っ越しはまだ家賃を抑える有力な手段ですが、「安いうちに」という前提は少しずつ変わっています。家賃差・通勤時間・初期費用の3つを自分の条件で計算し、納得できる選択をしてください。